第十三章 異変? 災厄?
13ー1 大事出来
俺はリューマ、あちらこちらの異界を訪問しているとついつい本拠地を忘れそうな気もするが、俺の嫁sが居り、可愛い子供たちの居場所を忘れるはずもない。
カラミガランダの本宅で政務をこなした後の午後のお茶をいただいているときに、不意に連絡が入った。
傍には誰もいないんだが、念話の類で連絡してきたのはアルノス幼女神様だった。
これは非常に珍しい・・・、いや、初めてのことだった。
これまでアルノス幼女神様とお話しできたのは
天上界で会ったのは、召喚途中だった一回だけと思う。
教会に行って、俺が祈りながら呼びかけると、その祈りに応えてくれて、天上界なのか単なる亜空間なのかわからないがアルノス幼女神様に会うことができたのだ。
これまではそのパターンだったのに、今回は俺が我が家に居るときに幼女神様から呼びかけて来たが、これは全くの異例である。
「リューマよ。
急ぎ知らせることがある。
最寄りの教会まで出向いてほしい。」
明瞭な指示を出して念話は切れた。
異例の措置を為してでも俺に連絡をよこしたということは、緊急事案と見て間違いなさそうだ。
俺は、瞬時に最寄りアルノス教会の上空に転移し、それから人目を避けて教会の敷地に降り立った。
仮にたまたま上空を見上げていた者が居たとしても、認識疎外と隠密効果で俺の姿は見えなかったはずだ。
それから協会に入り、聖堂で祈りを捧げると、すぐにいつもの空間に取り込まれた。
「来たか・・・。
待っておったぞ。
このホブランド世界の行く末にかかる大事が
お主でも対応できるかどうかはわからぬが、放置すればホブランド世界は消滅するやも知れぬ。
儂が直接介入できずとも、儂の加護を有する
心して聞きなさい。
その大本は大きな星の崩壊にあるが、そのこと自体はこの世界に影響を与えるものではなかった。
じゃが、問題は小さな星同士の衝突で生じた破片が散らばり、その一つがこのホブランド世界に向かっておるということじゃ。
当初は、余裕をもってホブランドを避け得るものと見ておったのじゃが、途中進路上の近傍に在った特異点が破片の進行方向をわずかに変えおった。
その進路変更により、其方が居るホブランド世界の惑星に衝突する公算が大となったのじゃ。
星の破片とは言いながら、その長径は其方が作ったウィルマリティモの直径よりもやや大きなものじゃ。
仮に、まともにホブランド世界の地表に衝突すれば、間違いなくその衝撃ですべての生命が抹殺されるほどの大規模な破壊の奔流が吹き荒れることになる。
儂には見守ることしかできぬが、其方なれば何か打開策があるやもしれぬ。
それゆえに知らせた。
破片は、龍角座の主星レバルカの近辺からホブランドに向かっておる。
其方なればその破片の探知もできよう。
後は其方に任せる。
其方は家族を引き連れて異世界へ避難することもできようが、流石にホブランドの生きとし生けるもの全てを引き連れては行けまい。
ホブランドが滅びても止む無しとは考えておるが、其方にできることがあればホブランドを救ってやってほしい。
正確な時期はいまだ判明していないが、ホブランド世界の近傍に到達するのは、およそ二か月後じゃ。
儂が見ゆるところ、ホブランド世界に育む多くの命は小さな宝石じゃ。
それぞれが様々な色にキラキラと輝いておる。
儂は見ていることしかできぬが、できればその見る楽しみをもっと続けたいとも思っておる。」
アルノス幼女神様は、そう言って上目遣いで俺を見た。
ウーン、そいつは反則だぜ。
俺にロリ趣味は無いが、可愛げな幼女に上目遣いでお願いされれば、断ることは難しいというものだ。
「何ができるかはわかりませんが、私のできる範囲で動いてみましょう。」
俺はそう言って約束した。
「よろしく頼む。」
アルノス幼女神様がそう言った途端、俺は教会の聖堂に戻ってきた。
さてさて、およそ二か月後か・・・。
長いようで短いよな。
ウィルマリティモほどの大きさともなると質量が
それが移動して来るだけでも周囲の天体に与える影響は少なくないはずだ。
もし、星のコア部分にあたる重金属が破片の主体ならば、要注意だ。
仮に進路を
先ずは当該破片の確認だな。
俺は、周回軌道に乗せている複数の監視衛星のスコープを龍角座方向に向けて、アルノス幼女神様の言う破片を捜索してみた。
空間を16分割し、更にその一区画を16分割して順次捜索することにより、対象となる破片を見つけることができた。
破片はスコープで見る限り暗い色をしている。
近くに恒星が無い所為もあるけれど、氷ではない可能性が非常に高いな。
現時点でその偏向角から推定するに、ホブランドからは5000億キロほども離れているが、更にその偏異差から計算して毎秒約10万キロつまりは光の三分の一ほどの速さでホブランドのある恒星系に向かって来ていることになる。
仮にこいつが重金属ではない氷の塊だとしても、その慣性モーメントの運動エネルギーだけでも、当たればホブランドの惑星はバラバラになりそうだ。
問題は光の速さの三分の一で接近してくる小天体にどう干渉するかだな。
こりゃぁ、宇宙戦艦ヤ○トの波○砲が必要になるぜ。
あいつなら設定上では、オーストラリア大陸程度は吹っ飛ばせるんじゃなかったか?
但し、そんなSFの戦艦は手元に無いし、どっからそんなエネルギーを持ってくるかが問題だ。
波動エンジンなんかねぇぞ。
23世紀に近い22世紀後半の地球でもそんな兵器やエンジンは生まれていない。
わずかに二か月でそれを造る?
ウーン、チョット無理ゲーっぽいんだけれど・・・・。
しょうがないなぁ、・・・。
困ったときの神頼み、いや神さんは、この際あてにならないんで俺の子供たちや嫁sにも相談してみよう。
三人寄れば文殊の知恵とも言うしね。
何か俺の考えつかないアイデアが出てくるかもしれん。
特に俺の子供たちに期待だな。
後は古代遺跡の知恵か・・・。
最近は、遺跡を封印したまま全く行っていないな。
メンテナンスも兼ねて久しぶりに行ってみるか。
今晩の夕食後に全員での家族会議を開くことにして、3年前からカラミガランダ本宅の家宰となったエルブスに家族全員に知らせるよう頼んだ。
その上で俺はランドフルトの古代遺跡に向かった。
古代遺跡には、AI擬きがある。
俺の大先輩に当たる
アゾール飛空艇研究所の内装や機能は、以前暇があるときにちょこちょこと整備したから、往年の7割がた機能は回復しているはずだ。
問題は、堂島さんが残したデータのメモリーが結構破損していて、復元が難しい奴もあることだな。
おそらくはデータの半分程度は残ったものの、さらにその半分が「虫食い」というか「文字化け」というか暗号状態になっている。
一応、それなりの自動プログラムで復旧を試みているけれど、その中にちょっと面白いものを見つけた。
星の
高速で飛来する隕石群を如何にすれば早期に発見して地上に衝突することを防げるか等を考察したもので、飽くまでシミュレーション的なものだったが、それでも参考にはなる。
堂島さんは究極的な手法として宇宙船を建造し、波動砲ならぬ斥力砲若しくは重力砲で進路を変えることを考えていたようだ。
尤もその途中で破壊が訪れて、アイデアだけで未完に終わっている様だ。
重力か・・・・。
俺も重力魔法は使えるが、多分俺の使える魔法での重力程度では大質量で高速移動する物体の進路を変えることはかなり難しいのだろうな。
それに、もし実行しようとすれば飛来する小天体のすぐ傍に在って常に魔法をかけ続けねばならない。
高速の三分の一の速度に合わせることができたにしても、場合により特殊相対性理論により内部の時間が遅延するだろうから余計に長時間の魔法発動を維持しなければならん。
俺が何人もいなければきっと無理だろうなぁ。
後は転移魔法で他所へ移す?
ウーン、前回クアルタスのオヴァデロン退治で使った虚数空間へ放り込む方法が使えれば良いんだが、シタデレンスタッドの直径を超える大きさとなると11キロか12キロ程度。
流石にそんなにデカいのを空間転移させたことは無い。
これまでで最大のモノは、オヴァデロンを虚数空間に放り込んだ際の転移罠の仕掛けだな。
オヴァデロンは、長さが約1キロ、幅が350mほどもあったはずだ。
一応あいつを丸ごと空間転移することも試してみたんだが、生憎とその魔法が効かなかったので、落とし穴と転移ゲートを設けて虚数空間に放り込んでうまく行ったわけだが、あのゲートを設けるのもギリギリの大きさだったから、とても今回の破片(小天体)丸ごとを放り込めるような転移ゲートは作れない。
因みに大きな岩を使って転移ゲートに向けて落っことした場合、ゲートの大きさが岩よりも小さい場合には転移ゲートが機能せずに岩はそのまま地面に落ちてしまうんだ。
転移ゲートの分だけ岩に穴が開くことを期待したんだが、ダメなんだよな。
だから転移ゲートを使う場合は絶対に目的物より大きなゲートを造らねばならないんだが、・・・・。
流石にオヴァデロンの10倍以上にもなる大きさのゲートは造れない。
後は、シタデレンスタッドからウィルマリティモへ通ずる地下道を造った際の穴掘りの要領で小天体の欠片を掘り進んで質量を減らす方法だが、こいつも実際に現場に行かなくては話にならん。
少なくとも1キロ程度までは近づかないと微調整の制御ができんだろう。
重力操作にしろ、質量を減らすための穴掘り作業にしろ、どうあっても小天体に近づかなければ話にならんから、邪神の欠片を人工のブラックホールに押し込めて、それを大きな自然のブラックホール近傍まで運び込んだ時に宇宙船を建造した経験が役に立ちそうだ。
少なくとも俺は10光年程度の空間転移ならば宇宙船ごとできるからね。
5000億キロ(0.05光年)程度なら余裕でクリアできる。
まぁ、小天体に追いつけるように、より大きな加速ができる宇宙船に改造せねばなるまいな。
こいつも本来は、結構大変な作業なんだが果たして二か月で間に合うのかいな?
一旦は中間空域まで進出して、ホブランドへ向けて加速しつつ小天体に追い抜かれないよう微調整をしながら横に並ぶのが一番手っ取り早い方法だろうな。
それにしても秒速10万キロまでの加速が本当にできるのか?
単純計算だと、1Gの加速度で千時間(≒42日)ほど加速すると秒速3万キロ前後になる。
これじゃぁ、とても間に合いそうにないから加速度を10Gにまで引き上げると、およそ100時間で秒速3万キロ、10万キロに達するには163時間(≒7日間)ほどかかる。
10Gの加速度に耐えるには重力魔法が不可欠だよな。
人工重力を船内に発生させれば乗員は何とかなるかな?
特殊相対性理論による時間の遅れは致し方ない。
俺は異界訪問に際して自分の時空能力何度も似たような経験はしているしな。
そっちの方は、あまり心配していない。
問題は小天体へ接近してからの対処だよな。
ウィルマリティモへの地下道を建設するにあたり、一回当たり高さ10m、幅20m、長さ200mの楕円形状のトンネルを掘った。
容積にして一回当たり概ね12万6千億㎥だ。
左程急がなかったし、色々あって270キロ掘り進むのに半年もかかってしまったが、採掘土砂量は1億7千万億㎥を超えたはずだ。
ところで今回の小天体は直径が10キロ余りの巨大質量を持つ。
推定体積では630立方キロ(6300億㎥)ほどにもなるだろう。
流石にこんなにデカいのは俺の亜空間には入らないような気がするぜ。
傍に移動しただけじゃ速度なんかは変わらないから衝突の危険は変わらない。
むしろ分散させることで対処が難しくなる。
ウーン、本当に面倒な問題だよ。
そろそろ夕食の時間なんで今日は我が家に戻ることにする。
また明日だな。
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