第六章 新たな産物と領内改革
6-1 新たに産み出せしモノ
俺は男だから良く知らなかったんだが、ホブランドにおける女性の衛生諸事情は結構大変なようだ。
着るものなんぞは、まぁ、それなりにあるが、下着は正しく中世だな。
王女であっても越中ふんどしに近いような紐パンがメインだった。
ゴムや
ブラジャーも無いわけではないが、身体にあったものとは言えないな。
ペラペラの単なる布製乳当てという表現が合っているのじゃないかなぁ。
コルセットやズロースは、地球に似たものが一応あるな。
ナプキン等はないので生理用品は、どうも布の切れ端などを使っているようだ。
生理の時は
端切れ布でも用意しようとすれば結構高くつくからな。
生理痛というのは、それこそ俺には全くわからんが、コレットやシレーヌの場合だと耐えられないほどでは無いものの酷い時は一日二日寝込むこともあるそうだ。
俺の妻になった二人には、何とかしてやりたくて、色々と試行錯誤しながら用意してみた。
下着各種、生理用品のナプキンを地球の通販で購入、それをコピーしたんだが、まぁ、結構な分量になったね。
デザインが色々あるから、俺が選ぶのもナンだから、サイズや色合いを変えて各種取り揃えて、使用方法を説明し、二人に選ばせた。
コレットとシレーヌが真っ先に飛びついたのはシュミーズ、ショーツ、ブラ、生理用ショーツ、ナプキンだったな。
因みにサイズは、シレーヌがD、コレットがEだった。
何のサイズかって?
うーん、わからん人は知らんでもいいよ。
コレットもシレーヌも自分に合うサイズで好きな色を30着ずつ希望していたよ。
それ以後、この二人がホブランド伝来の下着を着ているところを見たことがないから、よっぽど履き心地、付け心地が良くって気に入ったのだろう。
当然にお付きのメイド達は、コレットとシレーヌの格好のいい下着を目にするわけで、メイド長を通じて10日も経たないうちに要望書が上がって来たよ。
俺の甘いところかもしれないが、メイド達の熱望に応えるべく、下着の縫製工場と生理用品の工場を領地に作ることにした。
原材料は流石に石油化学製品を利用するわけには行かないので植物由来の樹脂から繊維を創り出した。
一旦魔道具を造って製造工程に乗せてしまうと後の生産工程管理は左程難しくはない。
但し、素材原料の植物は野生のものが少ないので、別途育成してやる必要があった。
そのために、紙製造を目的とする山林と繊維製造を目的とする山林の二つを管理するために営林組織を作ったよ。
主として荒れ地となっている領域を中心に植樹・植林を行い、樹木を育てるのが目標だ。
こいつは数十年単位の事業なので、個人で行える事業じゃない。
従って領主の独占事業として始めたわけだ。
当初は、植樹・植林以外にも対象樹木の伐採や買取も事業として行うことになる。
そこからの生産物で、紙を造り、繊維を産み出すわけだが、それまでの移行時期には従来製品と限定生産品を使うしか方法がないようだ。
下着の高級品には魔物であるファイバースパイダーの糸いぼからとれる繊維が主として貴族階級には重宝されているようだ。
特殊な加工方法を使うと、糸の粘着性が無くなり、糸の強度が高いまま繊維として使えるらしい。
但し、需要に供給が追い付かないので非常に高いのが玉に瑕であり、コレットでさえ下着で持っているのは二着だけである。
当然かどうか、シレーヌは持っていなかった。
まぁ、紅白金貨1枚程度かかるらしいから、単なる下着にそれだけかけるのは確かに無駄かな?
俺がメイドを含めて全員分を造って分けてやるのは、効率が悪すぎるし、いずれ俺が居なくなれば続かなくなる。
工場が稼働すれば、領内外での売り上げも期待できるだろうしな。
縫製工場を造るのだから、ついでにタオル地も作るようにした。
ホブランドでは肌触りのいいタオルは中々無いので、フェイスタオルにバスタオル等々タオル地も有用だ。
石鹸も液状石鹸を導入した。
ボディシャンプーとヘアーシャンプーであり、香料入り六種を選んだ。
王都別邸と領地の本宅には、いずれも備え置いているのだが、やはりかなりの需要があるようで、我が家に泊まって入浴した知人からは盛んに要望があるのだ。
で、こいつも色々と試行錯誤の上で魔道設備を作って工場を領地に造った。
何せ結構な人が俺の領地には集まって来ているから、女工さんなんかを集めるのにはあまり苦労しないんだ。
次いで領地に作ったのが化粧品工場だな。
鉛入りのおしろいなんぞは流石に嫁たちに使わせるわけには行くまい。
これも色々試行錯誤しながら、日本の熊本、静岡、栃木、宮城各県にある化粧品製造会社をそれぞれ秘密裏に訪ね、こそっと製造工程などを詳細に調査の上で、化粧品製造工場を立ち上げた。
これら工場が生産を始めるまでは止むを得ないので地球産の化粧品で安いモノを嫁sと側室候補達には提供した。
高価なものは効果も高いだろうが、継続供給を考えると余り宜しくない。
現地生産の物に慣れてもらうためにも安い化粧品にしたんだが、それでも嫁s達は飛びついたね。
工場が稼働して化粧品がこちらでも売り出せるようになれば需要は多分計り知れないものになるだろう。
だって、ワンコイン(500円)で買える地球産の化粧品がとっても良い製品だと評価されるぐらいだから、言わずもがなでしょう。
俺の化粧品工場で生み出す製品は、地球でも最先端に近い技術とノウハウで造られた製品とタメを張れるぐらいの品質と効果があるはず。
それも魔法や錬金術があるからできることだけれどね。
この世界ではまだ発展し足りていない
但しすぐには作れない。
物事を為すには適切な時期があるように、この製品も若干熟成が必要なんだ。
売り出す化粧品七つのうち、三つの製品に必要なものなのだけれど、セットで初めて生きる化粧品だからこそ、生産を揃える必要がある。
販売時期は凡そ三カ月先だ。
俺の亜空間で時間を早めることはできるが、それでは継続しない。
この世界の職人たちの手で生み出してこそ意味があるだろう。
但し、当面作業員には闇魔法で原料、製法、工程などの秘密を保持してもらうことになる。
簡単には生み出せない工法だけれど優秀な錬金術師が居れば真似することは可能だ。
商業ギルドで登録すれば一応の権利は守られるが、永久じゃない。
商業ギルドでの登録で守られる権利保護の期間は30年らしい。
尤も、俺は商業ギルドには登録しない方法を採るつもりだ。
登録には、製法や工法などを記載した書面をギルドに提出しなければならないが、それをしなければ権利の独占の主張ができ無いものの、逆に製法を公表する必要も無い。
実際に製法等を伏せて実質的に市場独占図っている製品もあるそうだ。
但し、その秘密が知られて誰かにギルドに登録されてしまうと、逆に金を払わないと製品が作れなくなるようだ。
その辺のリスクを十分理解した上で、ギルドへの登録をしないのも個人の自由らしい。
うん、取り敢えず、俺の真似をしてギルドに登録する奴が出てくるまでは静観することにしよう。
将来的には、別に知られて困ることは無い。
むしろ商売敵ができて切磋琢磨できるならばそれに越したことは無い。
独占というのはそれに
そう言うのは避けたいからね。
是非とも俺の寝首を掻くような商売上のライバルが出現して欲しいものだ。
そうそう、馬無し馬車と同じく、水洗便器についても受注生産を始めたよ。
リサのために作り上げた汎用の魔石利用水洗便器だが、上下水道の工事をしないので設置だけならだれでもできるし、利用方法も魔石に魔力を込めるか若しくは使い捨て用の魔石を使えばよい。
但し、特別受注品だから一般庶民にまで普及するのは難しいだろうな。
いずれ俺の領内に錬金術師を集めて、魔道具生産の一環で魔導便器を造らせたいとは思っている。
何せ高いからね。
一基あたり、白輪金貨3枚(約600万円)だよ。
大商人か貴族ぐらいしか買えない筈だ。
別に安くしてもいいんだが、俺の能力を知られないようにするために大量生産ができないんだ。
まぁ、一般への普及は、俺の領内でそう言った製造ができるようになるまで待ってもらうしか無いな。
そんなに大した労力じゃないんだが、60日の間に馬無し馬車1台、30日の間に魔導便器4台が俺のノルマ―になった。
他にも錬金術で造った製品を定期的に錬金術・薬師ギルドに卸しているからね。
因みに年間八台の馬無し馬車の生産で得られる金額は白金貨24枚(4億8千万円)。
洗浄便器の売り上げは、年間64基で白金貨19枚余(3億8千万円強)なんで、俺の副業のメインの収入になっている。
このほかに領内での生産品では、クリスタルガラス製造、ビート砂糖の精製、ポーションの製造などもあるが、意外と目立たないのが贈答品かな。
俺が地球から購入してきた物の複製品だからほとんど金がかかっていない。
余り大量に持ち込むと弊害があるかもしれないので、そこそこ自己規制はしているけれど、少なくとも貴族間のおつきあいで多額の金貨を使うことは少ないんだ。
但し、俺が金を使わないと経済は回らないから、色々と領地への公共投資を含めて結構な金は使っているよ。
むしろその反射利益でまた儲かっちゃたりするんだけれど・・・。
まぁ、ファンデンダルク家に限って言えば、赤字になる心配は全然無いな。
むしろどう使おうかといつも悩んでいるぜ。
俺の懐にはそうしたポケットマネーが結構入っている。
当然に領主としての収入は別会計だよ。
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次回予告「エステルンド砦再び」
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