美波、告白する
「今日の委員会、内容なかったなーー。」
「おーい、佐藤さん。」
「佐藤さんってば!」
はっ!!!
一平くんの声で我に返った。
「ご、ごめん。考え事してた……。」
「今日、ずっとなんか変だぞ。熱でもあるんじゃない?」
一平くんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「あのね、梶くん。」
そう、私はまだ本人を前にして「一平くん」って言ったことがなかった。
私たちはたまたま同じ衛生委員。
私たちは名字で呼び合う仲――。
それでもいい。告白なんてしたことないから、もう言っちゃう!
私は、今ここで告白すると決めた。
「私ね……、梶くんのことが好き。」
「へっ!!!? ホントに?」
「うん、できればお付き合いしてみたい。」
「……。」
一平くんは、何やら考えているようだった。
沈黙が長くなるほど、不安になる。私の心臓の鼓動もバクバクいってる。
「俺さ、まだ誰かと付き合ったことなくて、正直、誰かと付き合いたいとかも考えたことなかったんだよな。」
「……それが返事?」
「ちょっと待て、佐藤さんが俺のこと好きだなんて思いもしなかったから、今、真剣に考えてんの!」
私は百パーセントふられるんだと思った。この流れは、シュミレーションの中でもダメなパータンだもの。
「あのさ、俺、佐藤さんのこと、好きか嫌いかで言ったら好きなんだ。たるい委員会も真面目にやって、手先が器用なところも、あとちょっと抜けてるところもなんか、いいなって。」
「はい。」
「だから、付き合ってみようかな。」
「……本当に!!!???」
嬉しい。私は、自分に自信はなかったけれど、一平くんのことを好きな気持ちには自信があった。だから、一平くんが受けとめてくれただけでも、それだけで嬉しい。
「でもさ、付き合ったら何すんの?」
「委員会一緒に出て……一緒に帰ったり?」
「それじゃ、今までと変わらねーな。」
「はは、そうだね。」
「じゃあ、とりあえず、手でも繋いでみます?」
そう言った一平くんの行動は素早かった。
一平くんは躊躇うことなく私の指先に触れてくる。
でも、繋ぎ方も繋いだままの歩き方も、なんだかぎこちない。
別れ際、
「明日も一緒に帰る?」
と一平くんに聞かれて、私は二つ返事で返した。
一平くんと繋いだ手、汗で湿ってる。
指の隙間に流れていく風が心地よく、私はしばらく玄関前で幸せを噛みしめた。
(明日も一緒に帰れるんだ!)
嬉しかった。一平くんが私の気持ちを受け入れてくれるなんて――。
これからどんな日々が待っているのか、とか、友達になんて報告しようか、とか、クラスメイトの目線って気になるのかな、とか色々な考えが浮かんできた。
私のことを、好きか嫌いかでいったら好きって言ってた一平くんに、もっと好きになってもらえるよう、私は努力しなくちゃならない。
付き合って一日目の私は、そんなことを思っていた。
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