今でも癒えない怒り

 私が元カレの小説に出会ったのは高校生くらいの時だった。丁度pixiv百科事典を回っていて、その中に件の小説の記事があったのもあり、そのまま読んでみたのだ(ちなみに現在でこそ非公開になっているが、ハーメルンにも投稿しまくっていた様子)。

 読み進めていく内に、物語はどんどん陰惨になっていくが、その一方で(ベタな)お約束やギャグも見受けられる辺り、何をイメージして書いているのかは分からない。

 登場人物が序盤から死にまくるが、その中には(二次創作だからコレは仕方ないこと)声優さんがくっついているキャラクターも含まれている。何故そんな展開にしたのだろう、と思いつつも私は読み進めて行った。いつか彼と話が出来ることを願って。

 メガテンを勧めて「吐きそうになった」と彼が(怯えながら)言った、今だからこそ分かるが、元カレは私と真逆の人物で、私が嫌いなコンテンツの信奉者だったのだ。

 私が嫌いなコンテンツの中で一番嫌いなのは「fateシリーズ」。何も知らずにいればハマれたのだろうが、私がコミックを読んだ時は、18禁レベルの陰惨なシーンに沢山のページが割かれていたことをよく覚えている。彼はベルセルクは知っていても、ゲームオブスローンズは知らないし、メガテンとも(意図的に避けている節はあった)相性が悪かった。だのに、fateやまどマギを全て受け入れるというその姿勢には、怒り以外何も感じない。

 もっとディープなものに惹かれていれば良かったのに、とも思った。ありきたりなコンテンツにしか触れていないだけ彼は「幸せ」だったといえるから。実のところ、彼も彼で不幸ではあるのだけど、好意的で盲信的なファンが今でもいるというのならそれだけでいい筈だ。だから輝かしく、そして嫉妬と怒りが今でも続いているのだろう。相方を生まれて24年で得たとはいえ、私がそれだけで幸福なのかは分からない。

 相変わらず彼の語彙力は変わっていないし、書く内容もあまり変わってはいない。ファンはめっきり減っているが、輝かしく思えるのは変わらない。元カレとは全ての連絡を絶った私だが、私は彼が言ったことを湾曲した形で、一つだけ実行している。

 東方プロジェクトの楽曲をモチーフにした小説を書くことだ。元は「東方要素を入れろ」だったのだが、それだけではつまらない。分かりやすいから。

 いつか彼に私の作品が届くその時を願って、私は作品を作り続けようと思っている。彼のように、媚びなど売らずに。沢山の切れ端を繋ぎ合わせながら、私は空想を著すのだ。

 

 

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