無縁だとも思えない

ああ、最近花粉症で鼻がムズムズする。それどころか、くしゃみばかりするのでこの季節は生きるのが大変だ。目も痒いし、部屋の中にはティッシュのゴミが大量にある(散乱という訳ではなく、俗に言う「ゴミ箱から溢れている」状態)。しかし、今日は今日とて動くのが億劫な程寒かった。何せ三月なのに、昼ごろには雪が降るレベルなのだ。当然、自転車は使えないので、歩きで事務所に行くことになった。気のせいか、季節が変になっていないか?とも思っている。

 前から思うのだが、私の住んでいる街は徐々に変わって来ている。かつて古い薬屋さんや雑貨屋さん、呉服屋さんが今の職場の近くにあったのだが、いずれも別の建物に変わってしまった。呉服屋さんは保育園になり、その他二つは駐車場やマンションに。何故なのかは分からない。雑貨屋さんには、羽釜やら古いデザインの水筒があったことをよく覚えているが、薬屋さんと呉服屋さんには入ったことさえない(薬屋さんについてはちゃんと理由があり、当時はミネ薬局にばかり行っていたのがまず一つ)。私が一度も入ることなく潰れてしまったこの店には、一体何があったのだろうか。

 私がカバーしている範囲内では、周辺に最低三つは保育園がある。平地ならまだしも、坂の下にまであるから驚かされる。

「この辺そんなに人住んでたかな?」「この辺子どもがそんなに多いかな」と思うくらいには多い。待機児童は少しだけ減るだろうが(そもそも、共働きが多い時代だし、片親だけという可能性もあり得る。そういう人には福音なのだろう)。

 どんどん街並みが変わっていって、私が知る街ではなくなりそうなのが怖い。それに、私には無縁でも、他の人にとっては縁があるお店が潰れていくのを見るのは中々辛い。

 「縁がない」と言ったが、最近になって一つ、縁のある場所が出来た。駅前の小さな喫茶店だ。相方が待っている間に寄っていたらしく、その時は私も一緒に紅茶を頂いた。温かみのある空間は、落ち着く。が、その雰囲気は(その時座っていたのがカウンター席だったのもあり、朝だったのだが)場末のバーに近かった。かたやコーヒー、かたや紅茶を飲んでいるだけなのに。

 自転車で通り過ぎていくというのは、あまりにも勿体無い場所が思った以上に多いこの街。だからといって私はこの街に骨を埋めようとは思わない。いずれこの街からは出ようと思っているからだ。

 それにしても、寒い。締めの言葉が「寒い」以外思いつかないレベルで寒い。寒すぎてずっと布団にこもっていたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る