探してみたら
世の中、色んな人がいて色んなものがあるのだが、良さがわからないものというのはどうしても存在する。私は好みが偏っているから、良さがわからないものが人一倍多い。が、良さがわかるものもない訳ではないのだ。逆に、私には(少しでも)良さがわかるものでも、他人には良さがわからないものも確かに存在する。
私には自分が住んでいる街の良さはわからない。確かに都心に比較的近いのはいいかもしれないが、自然が少ないと感じる。森林公園などはあるし、鴨さんも見られるが、ラインナップとしては物足りないような気もする。他方では、駅近くに沢山の店があるのだが、これも生まれた時から当たり前だったせいか恵まれているとは思えない。大きな事件や事故は滅多に起こらないし、優しいひと達がいつも側にいてくれた。これが当たり前だと、世界を知らない時の私は思っていた。
少し前、高知から来たという後輩に会ってきた。秋葉原の景色は私にとって見慣れたものであったが、彼はなんとこの地に訪れるのは二回目で、周辺に何があるのかをあまり知らないのだと言う。とりあえず、ラジオ会館を適当に案内した後、昼ごはんをご馳走になり、ゲーセンへ行った。
彼は昼ごはんを食べている時、こんな話をしてくれた。曰く、ずっと田舎に住んでいたから都会の喧騒に憧れていることや、転勤族だったこと。意外なことに、ゲーセンでアルバイトをしていたようだが、残業は常だったという。その上、高校時代は不良に目をつけられていたともいい、彼の人生は恵まれたものではなかったようだった。世の中にはこんなひともいるんだな以前に、私の中には「不良って今もいるの⁈」という思いがよぎった。そして、田舎暮らしは羨ましいなと思った。
後から彼に住んでいるところの良さを聞いてみたら、家賃が安いくらいしかわからないという。一応、写真が送られて来たものの珍しい植物や動物がいるかどうかはわからなかった。ついでにいうと、高知は日本で数少ない鱰が生で食べられる場所なのだが、それも知らなかったという。便利で福祉が充実しているところより、いいところは沢山あるはずなのに。勿体ないと思った。
しかし、彼はいう。バイクがなければ移動が容易ではないと。最悪電車やバスを用いることで対処出来る都会の方がいいのだと。それでも珍しい植物や動物、建物などには事欠かない田舎の方が私には住みやすいと思うのだが、このままだと田舎へ引っ越すどころか、根を下ろしている場所から出られそうにない。
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