黒で描く世界

 (この先、黒という色以外扱っておりませんので、フルカラーを好む方は戻るボタンを押してください。黒一色だけでいい、という方のみお進みください)





 鉛筆だろうが絵の具だろうが、様々な画材に黒という色は付き物である。むしろない画材が珍しいし、それくらい黒という色は大事なものである。しかし、黒だけで描かれている作品はそう多くない。というか、様々な色を使って描かれた作品がほとんどである(漫画などは除外)。しかし、我々の目を楽しませてくれる黒一色だけの絵も確かにあるのだ。

 黒い世界を手取り早く描く方法があるのだが、知らないのか或いは手間がかかるからか、そこまで知られてはいない。それはリトグラフなのだが、本式のリトグラフはやろうとすれば材料集めからして大変である。その為、私は略式で描いているのだが、それでも成功率は低い(思うようにいかない)。クオリティが高い絵もあるだろう。しかし、この描き方は手間がかかる以上に服や手が汚れてしまう。洗い流すには、お湯と石鹸を使わないと綺麗に流せないのだ。これはリトグラフ用の絵の具が、石油でできているというのも一因ではなかろうか。けれど絵の具以外は身近なものでできるから、手が汚れるという理由で敬遠するのは勿体ないと思う(だからデジタルが流行っているのだろうか)。これで絵を描いたら言いようのない退廃を醸し出すことが出来るから、退廃好きにはたまらないと私は思った。

 黒一色だけ(というより無彩色)で描かれた作品で代表的なものがかの「ゲルニカ」である。これはれっきとした油絵(油彩画)なのだが、戦争の悲しみや恐怖などを描いた作品(母曰く「怖い絵」)。ぱっと見面白い絵ではあるのだが、その中には沢山の怨嗟と悲哀、そして狂気が混じっている。

 黒い世界の中にフルカラーの人物を入れると、異彩を放ちそこだけ際立つ。もう何度も同じことを繰り返してきたが、未だに私の真似をする者は見たことがない(自慢じゃありません)。何故だか、イラストだろうが何だろうが実験をする者は然程多くないように思える。デジタルを悪く言うつもりは全くないが、アナログな方が描いていて楽しいし表現の幅が無限大に近いのに、と思う。型にはまった方法もいいが、新しいことにチャレンジする気概も必要である。それは、若者だけではない。もしかしたら老人にも言えるかも知れないことなのだ。何歳からでも遅くはない。チャレンジはしたいと思った瞬間にするのが吉なのである。

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