生徒会警務部機動捜査隊!
丹波このみ
第1話 プロローグ
「はーい、ストップ。暴力は駄目でしょ、暴力は」
「この学園の校則知らねーの? 『生徒規約第八条。いかなる理由があろうとも、いじめは全面的に禁ずる。もし違反した場合は、それ相応の処分を受けるものとする』生徒規約はちゃんと読んどけよー?」
「何だテメーら!」
「つーか、いじめじゃねえし。躾よ、し・つ・け」
「こいつ、俺らがどんなにお願いしても一個も頼みごと聞いてくれないからさあ」
放課後の体育館裏。
一人の男子生徒が数人のいかにも、といった感じの生徒に囲まれている。
胸ぐらを掴まれ、今まさに殴られようとした時、背後から声がかかった。
「おまえらさー、やっぱバカだろう?」
「いっぺん、いじめって言葉辞書で調べてこい」
「はあ!? テメーら一体何なんだよ!?」
「証拠もねーくせにグダグダ言ってんじゃねえよっ!!」
その言葉に、二人は顔を見合わせた。
「やっぱコイツらバカだわ、稲葉」
「俺らの事知らないってどんだけモグリだよ。なあ、かんちゃん」
ふざけてんじゃねー、と掴みかかってきた男子生徒を難なく躱し、相手の腕を掴むとそのまま無造作に捻りあげる。
大げさに痛がりながら離せと叫ばれ、パッと手を離すと、男子生徒は支えを失ってバランスを崩しそのまま地面に倒れた。
「なにしやがるっ!!」
「それはこっちのセリフ。それに、証拠がなくて俺らが出ばってくると思った?」
「はーい、これが証拠でーす!」
稲葉と呼ばれた男が懐から写真を取り出し、無造作に放り投げる。
「よく撮れてんでしょ? お前らがやってきた悪行の数々。匿名で出された告発文が32通、直接訴えに来たやつが13人。恐喝、暴行、奪取、窃盗…余罪もたくさんありそうだなあ」
「お前らが恐喝してる場面とかもね? ちゃんと動画に収めてありますんで。あーっと、写真どうこうしたって無駄よ? 写真と恐喝現場押さえたDVD、既に学校に提出済みだから。追って学校側からなんかしらの通達が来るでしょう」
「まあ、こんだけ派手にやらかしたら、軽くても退学ってとこだろうな」
「っ、テメーら、一体何者なんだよっ!!!」
「…お前らさー、もうすぐうちのガッコの生徒じゃなくなるけどさ? 生徒手帳の条文くらい目、通しとこうな?」
「んじゃ、俺から自己紹介! 生徒会警務部機動捜査隊の稲葉基也ですっ! 以後見知りおきを、って以後もうねえか!」
「同じく、機動捜査隊の神田寿明。よろしくな」
ちょうどその時、その場にいた男子生徒達を職員室へ呼び出す放送が流れた。
くそっ、と舌打ちして走り出す男子生徒らを見送ると、その場にへたり込んで立てないでいた男子生徒に手を差し伸べる。
「大丈夫? 怪我ないか?」
「念の為保健室で見てもらったほうがよくねーか?」
「あ、いえ。大丈夫です。あの…ありがとうございました」
「いやいや、気にすんなって」
「お仕事ですからねー、って給料は出てねえけどな」
「俺らタダ働きよ? 酷くない?」
「てか、ほんとに大丈夫? 保健室まで送ろうか?」
「いえ、本当に大丈夫です。もう帰ります」
「そっか。気をつけて帰れよ?」
「はい、ありがとうございます」
手を振りながら去っていく二人の背中を見つめながら、男子生徒は深く頭を下げた。
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