篝火と霹靂

@yukkurisensei

序章 予感と不穏

パチーン

セミの鳴き声で埋め尽くされた公園に鋭い線のような音が突き刺さる。一瞬何事かと思ったが、どうやら向こうにいる女が男を平手打ちしたらしい。

やがて女がヒステリーに叫びながら男を責めだした。その声は蝉の声にも負けず公園中を響き渡る。

(こんな真昼間から痴話喧嘩か。大変だなぁ)

触らぬ神に祟りなし。私は池の鳥たちに視線を移した。都会らしく少し濁った水の上に、水草の絡みついたゴミと凛と佇む白い鳥が浮かんでいる。まさに掃き溜めの鶴といった感じのその光景を私は気に入っている。

いつの間にか女の声は止んでいた。どうやら男を振って帰ったらしい。けたたましく鳴く蝉の声の中、小さく聞こえる足音がこちらに向かっている。


嫌な予感がする。

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