第8話 傷つける。

傷つけるのが怖かった


でもそれは

自分を守る言い訳で


中途半端な優しさで

いつでも生殺しの様に

手を振り払えずにいた


わたしは別れが下手だった


幼い頃

知らない内に

消えていた人とは

別れることすらしていない



毎日過ごしていた人々も


手を離した途端に

まるでどこの誰なのか

わからなくなって


それまでの時間は嘘のように

消えてしまった


手を離したのはわたし


それでも

たまに思う


あの時間は

あの気持ちは


思い出とは呼べない


時の破片だけが

刺さるように

フラッシュバックする














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