下る

 12/31 07:50


「まず、雪はその……狼女?的な?」

「凄く凄く凄く血の薄い吸血鬼」

「血を吸うアレ?」

「別に血は私のご飯じゃないの、でも血がいる時もあるよ」

「今日の奴みたいな?」

「車って走り終えたら、エンジン止めるでしょ。私はエンジンをかけれるけど、止められないの。姿を変えたり、力強くしたりエンジンをかけるだけなら出来るの」

「ああ、そこで血が要るんか……誰の血でもいいの?」

「うん、まあ。引っ越しして来た時は荷物が多かったからお母さんと交互に」

「……めっちゃ生々しいというか生活感がある……あれ?じゃあ、雪の母ちゃんも?」

「私がよりちょっと先祖の血が濃い凄く血の薄い吸血鬼」

「……実は吸血鬼ってそこらにいる?」

「それはちょっと分かんない、私だって吸血鬼のイメージは漫画と小説と映画からだけど、自分がああかって言われると」

「……遠いわな」

「でも、鏡に映らないのは本当。エンジンをかけた後は鏡に映らないよ」

「ニンニクは」

「給食のローメン好きだったよ?」

「日光」

「いま私は何をしていますか」

「僕にお姫様抱っこされながら朝日を浴びるゲレンデを滑ってます、はい」

「そう、時々ストック代わりに使われてる感じで振り回されてる。あと、個人的に首をはねるのと心臓に杭は死なない方が怖いって私思うよ」

「……言われてみるとほんとや」

「でも春君に逃げられたらっていうのは凄い怖かった」

「もし……もし逃げてたら?」

「……まあ、血は別に用意してあったよ」

「……今ちょっとだけ吸血鬼っぽい」

「しょうがないでしょ。この話もあまりしたくなかったよ。何時かすることになるかな、ってぼんやり思ってたけど。突然言いだせないよ。私は吸血鬼です、なんて。化け物だって嫌われたくないじゃん」

「……普段の雪過ぎて、実感が湧いてこない」

「でも、大体人間でちょっとだけ人間じゃないよ」

「……うん」

「……どう思う?」

 ゲレンデに辿り着くちょっと前からスマートフォンは鳴りっぱなし。

 無線から声も聞こえている。それに答えるより大事なことは目の前にあるので、仕方がなかった。

「……雪さあ」

「……」

「明日暇?」

 受験生にかける言葉ではないと思ったけど。

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