明け方の光は暗さを追い払う
12/31 06:58
鳥の声が聞こえて、目を覚ました。
ほら穴の入り口方向が明るい。吹雪を抜けたんだな、と身を起そうとして。
自分の体を温めているモノにようやく意識が向いた。
スキーウェアの下で自分を包むように眠る、狼。
「……」
触れてみる。少し硬めの手触りの毛並み、確かな温かさ。なんとなくシベリアンハスキーを連想するけれど、高校生一人をくるむような大きさのはずもない。
目を閉じてスゥスゥと寝息を立てるソレを見ながら、自分の恋人の姿を探して頭を洞穴中に向けた。
そこにいるのは自分と狼と死体だけで、眠りに落ちる前に最後に見たものが頭を過ぎって、でもなんとなしに狼に手が伸びた。
頭を撫でる。
「……」
狼は目をつぶったまま、でもパタンパタンと音を立てて尻尾が地面をたたいた。
もぞもぞと上半身を起こして改めてその姿を見る。大きい、んじゃないだろうか。何となく立ったら自分の腰位の位置に頭があるんじゃないだろうか、そんな事を考えつつ頭を撫で続けていた。
パタンパタンパタン、尻尾が地面を叩く。
「……犬みたいだ」
尻尾の付け根のあたりを撫でる。パタンパタンと音を立てて尻尾が揺れる。
パタンパタンパタンと音を立てていた尻尾が止まった。
「……?」
尻尾の反対側、頭の方を見やると目が合った。僕の良く知る目に。
どうしよう、という悩みがかき消されるのは一瞬だった。勢い良く後ろ足で顔を蹴っ飛ばして狼は距離を取り、ひと声吠え声を上げた。
「な、なんだよ」
蹴られた場所を抑えつつ驚いて立ち上がる、狼は距離を取ったままこっちを見ている。不機嫌な時の雪がそうるように、睨むような眼を向けて。
「怒ってるの、か?」
何かしただろうか、自分のした事を思い返す。頭を撫でて、尻尾を振っていたから犬にするように尻尾の付け根を。
「……尻尾の付け根?」
自分の尾てい骨の辺りに手を伸ばしてふと思った。
「……えっと、つまり今のは……尻?」
砲弾のように勢い良く狼が、頭を僕の腹部に叩き付けた。
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