焦って良いこともなく
12/30 16:01
僕等が火が消えた洞穴の中で火元の確認をしに、ついでにまだ少しだけ残った熱が勿体なくてウェアの残骸までスマホのライトを頼りに辿り着いたとき、ようやく頭がパニックから少し抜けたような回答を伝えてきた。
「……ウェア、毛布代わりにすればよかった……」
「……ほんとだ…」
声の方を向いて、多分顔を見合わせた形になって二人同時にため息をついた。
『焦ってる時に焦ってることを自覚しなきゃ、焦りから抜けられないぞ』
なんてコーチの言葉を思い出してしまう。
先刻からジワジワと下がっていた温度が、夜を迎え駆け足で落ちていく。
少しでも良いから吹雪が止んでくれれば、外に出れるかもしれない。でも先刻煙から逃れるために飛び出した外の状況。
「……外に出るのはまだ厳しい」
ぽつりと声が漏れた。
「今は絶対無理だよ。私もこんな天候見たことないもん……」
見えているはずもないなと思いながら、雪からの同意の声にうなずきスマートホンを取り出す。ライトを頼りにまず自分たちの荷物を手に取り少しでも吹雪から離れるべく洞穴の奥に向かった。
一秒で良いので早く晴れることを願いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます