第50話 運命の東大受験合格発表
重要な日ほど雨が降る事が多いのだが、そんなジンクスをぶち壊すほどの大晴天だった。
遂に迎えた東大受験合格発表日。
田中と八木教授は、東大赤門前にいた。
田中「遂にこの時が来ましたね…」
八木教授「そうだな。早く、合格発表見てラーメン食いに行こうぜ。腹減った」
八木教授の腹の音が鳴るのを横目に田中は軽くため息をつく。
田中「ほんと。こんな重要な日まで相変わらずですね。」
八木教授「お前が絶対に東大合格してるって確信してるから安心してんだ。早く結果、見て来いよ。腹減ってるからさ」
八木教授の照れ隠しを含んでいるような勇気のある言葉を受け止めて田中は、力強く返事をする。
田中「はい!!」
合格発表が記載された板へ向かうに連れて心音が徐々に強くなる。
色んな沢山の受験生が合格発表を見て、喜んだり、悲しんだり、悔しがったりという感情が巻き起こっていた。
遂に、田中と八木教授は、合格発表板の前まで着く。バクバクとする心音を必死に抑え込み、受験票を取り出す。
隣から聞き覚えのある声が聞こえる。
新海教授「あれれ?負け犬ブラザーズも見に来てたのかい?」
鈴木「どうせ不合格だって分かりきってるのに見にくるなんてアホですね。ま!負け犬だからそこまで頭回らないか」
隣にいたのは、新海教授と鈴木だった。
八木教授と田中は2人を睨みつけ言葉を返す。
八木教授「あれ?根暗ブラザーズも見に来てたんだ?奇遇だな!丁度、後ろにカメラマンもいるから今度こそ土下座な!」
八木教授が後ろの方を指差すと、司会者とカメラマンがうきうきでスタンバイをしていた。
新海教授「いつの間に…まあ、丁度いい。今度こそ二度と立ち直れなくさせてやるよ」
八木教授「中間生中継では勝てたけど、本番では負けました!ごめんなさい!負け犬は僕らでしたって喚くなよ」
お互いの師弟コンビは睨み合い、弟子達は、受験表に目をやり、再び合格発表の確認を始める。
田中の受験番号は『3289』
合格発表板の番号を見る。
『3279』
『3281』
『3282』
『3285』
『3288』
そして、遂に、運命の瞬間が来た。
田中は、受験表番号を再び確認し、運命の瞬間の確認をする。
田中と八木教授の2人の時が止まった。
隣から聞こえてくる。
鈴木「え…あ…うそ…ご、合格してた…」
鈴木は、受験表を片手に立ち竦んでいた。
新海教授「え…ま…まじ!!お…おめでとう!!!?」
新海教授は、嬉しそうに鈴木の肩を叩く。
鈴木は、涙を流していた。
鈴木「新海教授!!ありがとうございます!!」
新海教授「俺の指導があれば、当たり前だよ!!おめでとう!で、負け犬ブラザーズはどうだった?」
新海教授は、時が止まった八木教授と田中を見る。
田中の目線の先に映る合格者番号。
『3288』
『3290』
この数字が意味をするものを八木教授と田中は理解した。
田中「お…落ちた…」
八木教授「…」
2人の肩にポツンと空から水の粒が落ちる。
その水の粒は、次第に増していき、大雨となる。
あんなに晴天だったのに突然のゲリラ豪雨は、2人に運命を叩きつけるようであった。
豪雨に濡れて死んだ目をしながら八木教授と田中は、合格発表場所の赤門前に辿り着き、立ち竦んだ。
この赤門を通り抜ければ、この計画が終わった今、2人は離ればなれとなるだろう。
そんな感じがした田中は、最後に八木教授に問う。
田中「ねえ…どうして…なんだよ…」
八木教授「…ごめん…」
初めてだった…今まで田中に謝った事がなかった八木教授が、初めて謝った。
その「ごめん」という一言の重さを噛み締めた。
田中は、それ以上、八木教授を責める事が出来なかった。
ゲリラ豪雨は、まだ、降り止まない。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます