第39話 人の部屋に入る時は、ノックをしてからちゃんと返事を待とう!
田中は、八木教授のアパートに走るさなか、考えていた。
鈴木から言われた言葉、八木教授の過去の事、そして、自分が八木教授に東大受験辞める宣言をしてしまった時の事。
そうだ。土下座という屈辱は味わった。めちゃくちゃ悔しかったが、まだ、東大受験本番ではない。
鈴木に名付けられた負け犬土下座くんという言葉。
東大受験本番で、きっちりその屈辱を返してやればいいんだ。
悔しいが、あのコンビニで鈴木と偶然会って話したことにより、再び、自分の中の気持ちと決意が固まったのかもしれない。
ー八木教授と一緒に東大合格して、鈴木と新海教授にこの屈辱を絶対に返す!!!
そのためには、あの時、以来、連絡すら取れなくなっていた八木教授に謝らなければいけない。
どこにいるのかは、分からない。もしかしたら、アパートにもいないかもしれない。
その時は、別の場所を探す。そして、見つけて謝る。
そんな感情や思いを胸に、田中は走った。
八木教授のアパートに付き、チャイムを鳴らした。
チャイムの音に反応してなのか、中からがたっっていう物音は聞こえた。
だが、返事はなかった。
田中は意を決して、アパートの扉を勢いよく開けた。
目の先には、八木教授が驚いた顔で、田中を見た。
八木教授の姿を確認した田中は、頭を勢いよく下げた。
田中「八木教授!!!あの時は本当にすいませんでした」
突然の田中の謝罪に、八木教授は、驚いてるのか何も言葉を発さなかった。
すかさず、頭を上げて八木教授を見つめて田中は続ける。
田中「もう一度!僕を指導して、東大合格させてください!!」
その田中の言葉に束の間の静粛の時間が流れた。
静粛の時間を破ったのは八木教授だった。
八木教授「ああ。絶対に東大合格させてやる」
八木教授がとっさに出した本音の言葉だった。
めちゃくちゃ悩んで言おうとしていた当初の言葉とは違ったが、こうゆう言葉の方が素直に自分の気持ちを伝えられるのかもしれないと感じた。
田中「ありがとうございます!!また、よろしくお願いします!!」
田中は、大きな声感謝を伝える。
八木教授「おいおい。こんな時間に大きな声を出すなよ。近所迷惑だぜ」
八木教授は、口角を若干歪ませ、笑みを我慢しようとしているようにも見える。
田中「はは。いつもの八木教授らしいや。あれ?そのホワイトボードに書いてあるのって・・・」
田中は八木教授の部屋にあるホワイトボードに目をやると、さっきまで、田中が戻って来た場合になんて言うかのアイデアを書いてたのを見つける。
八木教授「あ・・・やべ・・・。ああ、こ、これは、ええい!気にすんな!!」
八木教授は、ホワイトボードを全力で蹴っ飛ばして、倒した。
大きな物音が鳴った。
おそらく、田中にこのホワイトボードに書いてあることを見られるなんて予想してなかったのと、見られた時にどう誤魔化せばいいか思いつかなった故に蹴っ飛ばしてしまったのかもしれない。
田中「やっぱり、八木教授は天才だ!一生付いていきます!ねえ…」
田中は焦る、八木教授を見てにやりと呟いた。
つづく
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