第27話 決着


試合終了のゴングと共に


田中の張り詰めた集中は溶けて、椅子の背もたれにもたれかかった。


八木教授は、そんな田中を見て、軽い笑みを浮かべながら


八木教授「よくやった」


と小さく呟いた。


司会者「さあ!試合終了となりました!採点の方は、番組公認のプロがやります!30分後に結果発表となりますので、田中選手、鈴木選手!共にしばしの休憩を!」



司会者のアナウンスから戦いの結果発表は、30分後に再びこのスタジオに集まり、生放送で発表する事となった事が分かった。


田中と八木教授は、番組が用意した楽屋で戦いの結果発表を待つ。


楽屋内の机を挟んで椅子に座ってる八木教授に田中は、安堵のため息をつく。


田中「途中で頭パニックになって頭回んなくなっちゃいましたが、出来る限りの事はやりました」


その言葉を聞いた八木教授は田中に一言言った。


八木教授「よくやった」


その八木教授からの一言の褒め言葉が田中の中に張り詰めていた色んな感情を解きほぐし


田中は、机に突っ伏して泣いた。


八木教授に対して


「ダメかと思いました!」


「残り時間迫ってる中で、鈴木が時間前にテスト終わらせてたのでもう無理だと思いました!」


泣きながら溜め込んでいた弱音を吐き出す田中。


それを頷きながら八木教授は聞く。


楽屋内のアナウンスが鳴った。


アナウンスから聞こえてくる司会者の声。


司会者「田中選手!鈴木選手!運命のテストの結果が出ましたのでいざ!スタジオへ!」


その声を聞き、田中と八木教授は気を引き直し、スタジオに向かう。


スタジオの扉を開ける手が震えてる田中に対して八木教授は、言った。


八木教授「今回の戦いで分かったと思うが、試験の本当の敵は、鈴木でもなく、お茶の間の視聴者でもない。自分自身だ。どんな結果だろうと、受け止めろ」


その言葉を聞き、田中は頷き、スタジオの扉を力強く開ける。


スタジオに入り、さっきのテスト対決の時と同じように、田中と鈴木は、隣同士の椅子に座り、遠くから八木教授と新海教授がそれぞれ見つめていた。


そして、カメラに向かって司会者は話し始める。


司会者「では!運命の結果発表です!まず、今回のテストが100点満点となっており、それぞれの点数を発表します」


田中と鈴木は、共に真剣な顔だツバを飲む。


司会者「勝者の点数は!80点!敗者の点数は!50点!30点差となった!それでは!運命の結果発表だ!勝者は!」


そして、司会者が運命の結果を発表する。


田中、鈴木共に険しい顔つきになり、それを見守る八木教授と新海教授の顔も険しくなる。


敗者は、お茶の間の笑い者


敗者は、勝者の土下座する


お互いに譲れぬプライドの翼


へし折られたのは…


司会者「勝者は!!鈴木選手!新海教授&鈴木選手ペアの勝利だ!」


目の前が真っ白になった。分かっていたのに。


プライドの翼をへし折られたのは、田中だった。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る