第15話 答えが出せないなら東大受験辞めろ

「宿題の答えは見つかったかな?」


そう問いかけてきた八木教授の言葉に対して、田中は硬直して言葉を発せなかった。


硬直して、言葉を発せずにいた田中を見て、八木教授は察したのか


八木教授「宿題の答えはみつからなかったか」


その言葉を聞いた田中は小さくうなずいた。


八木教授「それでは、宿題に対するヒントをあげよう」


田中「え?」


驚く田中を見て八木教授は言葉を続ける。


八木教授「医者になりたいという目標を持った、高校生は何をするか?当然、医者になる為には医学部に入らなければいけない。その高校生は、医学部に入る為に受験勉強をする。医学部に入ったから目標に対するゴールではない。医学部に入った後も、医者になる為に大学で勉強し、医者になる為の試験に合格しなければいけない。医者になる為の試験に合格し、初めて目標を達成したことになる。これがヒントだ」


八木教授は、そうヒントを田中に与えた後に、1枚の白紙の紙と、1本のペンを田中に渡した。


八木教授「頭の中で考えていても、考えなどまとまらない。制限時間を1時間やる。この紙に宿題に対する答えを殴り書きのメモでもいいから書きまくれ。そして、1時間後に自分の中でまとまった宿題に対する答えを俺に伝えろ。宿題に対してのお前の答え次第で、お前が東大受験を目指すか諦めるかを俺が判断する」


田中「あ・・・はい」


八木教授にまくしたてられた田中は白紙の紙とペンを受け取り小さくうなずいた。


宿題に対して、与えられた1時間というタイムリミット


浪人生となって、グダグダしてた時は、1時間なんて無意味に過ぎ去っていたのに


この1時間は、田中の今後を決める重要な1時間となる。


そのプレッシャーからか、田中は、白紙の紙を前に持ったペンを握る手が震えていた


そんな田中をしり目に、八木教授は、自分のスマホの動画サイトの画面を見ながら


八木教授「プライドバトル次回、生放送か」


と小さく呟いていた。


田中は震えた手で握ったペンの動きが止まったまま、なにも白紙の紙に書きだせずにいた。


そんな田中を横目に見て、八木教授は呟く。


八木教授「東大受験でも、そんな問題用紙に何も書けずに終わるのか?試験は制限時間がある。そんな手を止めてる時間なんてない」


八木教授の辛辣な一言に田中は、何も言葉を返せなかった。


八木教授「なんでもいいから、紙に書け。止まってる時間が一番無駄だ。一度、エンジンが掛かってしまえば、どんどんギアは上がっていく。残り制限時間30分切ったぞ」


田中は、何も出来ぬまま30分もの大事な時間を無駄にしていたことを八木教授の言葉から認識した。


「なんでもいいから紙に書け。止まってる時間が一番無駄だ。一度、エンジンが掛かってしまえば、どんどんギアは上がっていく。」


八木教授のこの言葉を、田中は自分の頭の中で繰り返した。


田中はおもむろに白紙の紙になんで東大に入りたいのか?という言葉を書きだした。


そのあと、自分の頭の中で、去年東大受験の掲示板に自分の受験番号が書いてなかった光景を思い出した。


そのあと、田中は、浪人という言葉を紙に書いた。


紙に書いたその言葉を田中は見つめて、田中の中で何かが弾けた。


浪人、悔しい、見返したいとどんどん紙に自分の中で抑え込んでいた気持ちを紙に書きだしていった。


そんな、田中を見て八木教授はにやりとした。


つづく



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