眠れる楽園

雨世界

1 月を歩く。

 眠れる楽園


 登場人物


 太陽 サン 十四歳 小国の美しいプリンセス


 月 ルナ 十四歳 天才科学者 サンの親友


 プロローグ


 やっと、君に会えたね。


 本編


 月を歩く。


 月の月面 孤独な海


 第一研究所 ルナステーション


 私たちが初めて出会ったのは、春の日の、白いお城のある街の中の学園の、誰もいない二人だけの教室の中だった。……それは私たちがまだ本当に小さい子供だった初等部一年生のころの思い出だった。

 ……あなたはそこから、青色の空に浮かんでいる、白い月の姿を見ていた。


 まるでそこから自分の頭の中で、この世界の秘密を、すべて解き明かそうとしているみたいに。


 門 ゲート 入り口にて


「月って初めてきたけど、結構いいところだね」大きな空間の取られた半円形の通路を歩きながら、にっこりと笑ってサンは言った。

「別に普通だよ。どこでも同じ。なにも変わらない」通路を包む、全面の特殊なガラスの壁の外に広がっている、なにもない真っ暗な空と、ごつごつした灰色の大地の広がっている、月の風景を見て、ルナは言った。


「そうかな? いいところじゃない。静かだし、ほかに誰もいないし、なにより、自由だし」ルナを見てサンは言う。

 久しぶりに見るルナは少しだけ、その髪の毛が伸びていた。


「同じだよ。空の上だって、海のそこだって、地下深い場所だって、みんな同じ。なにも変わらない」ルナは言う。(変わるの場所じゃなくて、人だって、言いたいのかな?)


 月に建設された都市は、クレーターのような大きなくぼみに沿って、透明なドーム状の天井がつけられて、そこが一つ一つの都市として機能する予定だった。(計画では最初のプロジェクトで13の月面都市が建設される予定だった)


 でも、残念ながら、まだそこまで月の建設は終わっていない。


 今はまだ実験の段階で、たくさんの人が住む予定の(だいたい百万人くらいの人が一つのクレーター都市に住む予定だった)月面都市の建設の前に数人から数十人規模の実験的な基地、あるいは簡易的な生活施設が作られている段階に止まっていた。


 これらの実験がうまくいけば、今から二年後くらいには、(もちろん、天文学的な莫大な資金を必要として)本格的に月のクレーター都市の開発が始まる予定なのだと、ルナはサンに移動中にそんな話をしてくれた。


 ルナは(サンが見慣れた)いつもの学生服姿ではなくて、真っ白な白衣を着ていた。その下は大人びた白いスーツのような服を着ていた。

 サンはいつもの学園の学生服姿だった。(白いゆりの花をテーマにデザインされた制服らしい)

 ルナは、この月面にある第一研究所、ルナステーションの責任者だった。(主席研究員と言う肩書きがあるらしい)


 天才、ルナは若干十四歳にして、このような重要な複数の国が協力する国家プロジェクトの一員になるような、真の天才の一人だった。(ただ、この月面にはルナのような、いわゆる、真の天才たちが結構な数、滞在していた。それらは皆、ルナと同じように、国家と契約をして、国家に雇われている、現在地球で存命している、なだたる天才科学者たちだった。なにせ科学とは無縁のサンのような人でも知っているような、驚くような有名な科学者の名前が、数人混ざっていたくらいだった)

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