藁人形のゆくえ
翌日の朝。ライチと街の調査(遊び)に行くエイジャを見送ってから、タキシードは事務所の屋根の上でうとうとしていた。彼の隣では風見鶏がキコキコ暇そうに鳴っている。
タキシードは、黒猫の宿命か、昼間何も考えずに動くと目立つ。しかし、こうした定点観測業務ならお手の物。風に吹かれながら王様気取りで南バミューダに散った獣たちの報告を待っていた。
まず報告を持ってきたのは
やはりベリーヒルにはラベンダー
次に報告を上げたのは二代目
ついでに、最近夜に街をブンブン音を立てて飛ぶ見知らぬ奴がいるらしいということで、鳥たちが迷惑がっているらしい。タキシードじゃないかと疑われたのだが、タキシードはそんな音を立てて飛ばないと説明したら分かってもらえた。
三番目はウェルシュだった。
タキシードの屋根の上のライバルを自称するウェルシュが言うには、最近港で
本命のカジノが事務所を訪れたのは昼下がりだった。恐らく見つけたということだ。
実際のところ、今回のミッションはカジノたち
タキシードがカジノにその場所を教えて貰い、代わりに報酬の
最近、バミューダ全域で〈
カジノが帰った後、タキシードは風見鶏の様子を見た。風は
タキシードは木の上で羽を休めていたヤマバトの一群にお願いして連帯飛行してもらい、昼の南バミューダの空を
そうしてタキシードが降り立ったのは、とある住宅街の屋上。彼は親切なヤマバト達に猫の手を振ってバイバイすると、向かいの住宅の窓を覗んだ。
流石はカジノ。情報が正確だ。悔しいが、やはり追跡において犬の右に出る獣はいないだろう。
見れば一人の男の子が机の上に
タキシードが音もなくその部屋に飛び込んで、したりと着地すると、
「なぁ」と、タキシードが鳴き声とも呼びかけともつかぬ声を上げれば、その男の子はびっくりして振り返った。
「――自分、おとといの祭りに来とった子供やな」
「えっ! ……あ」
タキシードが声をかけると、男の子の方も思い出したようだ。お祭りの日の夕暮れに木に隠れてラフランを見ていた、あの子供だ。
「……その
「えっ、ラフランちゃんを知っているんですか?」
男の子の目が眼鏡の奥で大きく開かれた。
「おお、知っとるよ。実はな、その子に頼まれてその人形を探しとったんや」
「……」
男の子は黙って
「ワシはタキシード、ぼうずは?」
「……シド、です」
「そしたらな、シド。ワシはぼうずを
「え、でも……どうして僕が持っているとか、盗ったんじゃないかとか……」
「聞かんし、言わんし、思ってもないし……まぁでも、聞いて欲しいなら聞くで」
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