7ヶ月後の約束

ひろきち

短編:7ヶ月後の約束

僕の名前は高坂 優。川野中学の3年生だ。

今日 僕は振られた。

厳密に言うと告白する前に相手に彼氏が出来てしまったようだ。

・・・ん?これは振られたって言うのか?


彼女とは小学校からクラスがずっと一緒だった。

小学校の頃は、仲がいい友達グループの一人という感じで接してたけど中学に入るあたりから異性として意識し始めた。

明るい性格で笑顔が愛くるしい彼女はクラスでも人気者で、客観的に見ても可愛く告白も何度かされていた様だった。


それに対して僕は可もなく不可も無くなごく普通の中学生だ。

ただ、そんな僕だけど彼女とは仲が良い方だとは思っている。

時々一緒に帰ることもあるし、放課後二人で買い物にも行ったことがある。

だからこそ、僕も何度か彼女に告白しようと思いはした。

だけど

"進級したら" "テストで彼女よりいい点とったら" "○○出来たら" ・・・

等とタイミングを考えたけど勇気が出せず先送りにしてしまっていた。

もし振られたら

"友達としても一緒に居ずらくなってしまうんじゃないか"

"嫌われるんじゃないか"

それが怖かった。今の関係も壊したくなかった。


その結果・・・

さっき買い物に来ていたショッピングモールで彼女が年上と思われる男性と腕を組んで歩いているところを目撃してしまった。

背が高く遠目に見ただけだけど顔もカッコよかった。

そして、彼女も安心しきった感じの笑顔で話をしていた。

自業自得なのかもしれないけど辛いし、僕はあの人にはかなわないとさえ思えてしまった。

最も僕は彼氏でもなんでもないただの友達。とやかく言う事は出来ない。


でもこのまま終わりにはしたくない。

そうだ。相手に彼氏が居て振られるという結果がわかっているなら告白も怖く無いんじゃないか?どうせ友達以上にはなれないんだから・・・


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7月某日。今日は1学期の終業式。

明日からは長い長い夏休みだ。

ただ、僕たちは高校受験を控えた中学3年生。

遊んでばかりはいられない。多分ほとんどの子は塾の夏季講習に行くと思う。

僕も彼女と同じ市内の予備校に行くつもりだ。

だから夏休み中も彼女には会える。


でも、もう先送りにして後悔はしたくない。

このもやもやした気持ちを何とかしたい。

だから教室を出て下駄箱に向かう彼女に声を掛けた。


「ちょっとだけ時間貰えるかな」

「え? うんいいよ。 どうせ帰るだけだし♪」

僕は彼女を連れて、空き教室に入った。


「ん?で何の用事?こんなところに来てもしかして告白だったりするのかな♪」

彼女はおどけた感じで僕に話しかけてきた。

頑張れ僕。今頑張らないでどうする。


「あぁそうだ。告白だよ」

「え!?」

「小早川 紅葉さん。ずっと好きでした。僕と付き合ってください!」

「・・・・・・」

静寂。ほんの数秒だったかもしれないけど凄く長い時間に感じた。

彼女は何も言わずに俯いている。

やっぱり駄目か・・・頑張ったよな僕。


「ごめんな。やっぱり駄目だよな。

 彼氏が居るのわかってたんだけど思いだけは伝えておきたくて。

 今言ったことは忘れてくれ」

と泣きたいところをこらえつつ教室を出て行こうとした。


「ちょ ちょっと待って。

 まさか優君に告白されるとか思ってなかったから驚いちゃって・・・」

だよね。やっぱり僕は男として見られてなかったってことだよな。


「それに私、告白は何度かされたことあるけど彼氏とか居ないよ」

そうだよな。彼氏がって・・・・ん?


「え?彼氏いないの?」

「うん」

「で でもこの間ショッピングモールで男の人と腕組んで・・・」

「あ~~ あれを見られてたんだ。」

「あれってやっぱり彼氏なんだろ?」

「違うよ。あの人はお姉ちゃんの彼氏で未来のお義兄さん。お姉ちゃんに

 プレゼント買いたいからって買い物に付き合ってただけだよ」

そ そうだったのか・・・・・ちょっと嬉しいかな。

でも・・・・


「そうだったんだ。誤解してたよ。ごめん」

「うん。いいよ。で、その~告白の事だけど本気 なの?」

「え あ うん。。。ごめん、彼氏のことは別としてやっぱり迷惑だったよね」

「ふふ さっきから優君"ごめん"ばっかりだね」

「だよね。。。」

駄目だ。もうこれ以上言葉が浮かんでこない。


「嬉しかったよ 優君私の事は友達としか見てくれて無いと思ってたから」

「え?」

「私も優君の事が好きだよ」

「えええ!!!」

ほんとうですか!


「告白しといて驚かないの!私も恥ずかしいんだから!」

「ご ごめん」

「だから、謝らないでよ もう!」

つい謝っちゃうんだよな。でも、これは告白成功なのか?もしかして。


「でもね。もう少し待ってほしいんだ。

 多分今優君と恋人同士になったら私は沢山遊んじゃうと思うんだ。

 お姉ちゃん達みたいに遊園地とかも一緒に行きたいし映画やお買い物

 にも行きたいし。

 でも私たちって受験生でしょ? 

 だから、受験が終わるまでは今まで通りの友達付き合いをしたいの。

 それじゃ駄目かな?」

確かにそうだよな。タイミング悪いよな。


「うん。わかったよ。受験が終わるまで待つよ。

 僕の成績じゃ川野辺高校はギリギリだからね。

 紅葉ちゃんと同じ高校に入れる様頑張らなきゃダネ!」

「うん。一緒に頑張ろ!だからね。今はこれで我慢してね♡」

ん?ほっぺに柔らかな感触が・・・・


「じゃ じゃあ約束だからね!一緒に高校行くんだからね!」

と頬を真っ赤に染めた紅葉ちゃん。

やばい。嬉しすぎて僕死んじゃうも。。。。


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2月

受験が終わり、川野辺高校の合格発表日

無事合格して"約束"を果たした僕らが、抱き合いながら再び告白し付き合い始めるのはもう少し先の話。

そして、からかい上手な紅葉さんは楓先輩にお返しとばかりに僕との仲をからかわれましたとさ。

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