第15話 深夜

午前3時半。

まだまだ外は暗い中、多くの人が床に付き寝静まりかえる時間帯。

私はまだ眠くなかった。

とはいえ家庭用ゲームやらスマホを開いても目新しい事や面白い事も無く、読みかけの本も切らしていた。

いっそ目を瞑り眠ってしまおうか、でも何故だか勿体ないような気分。

そう、これは誰かが言っていた。

今日という日に満足できなかった奴が夜更かしするのだと。

毎日毎日満足感で満たされながら生きられたら苦労しないわな、と反論してみたくもなる。

っと、そうじゃなくて。

……まだまだ夜は長いな。

いっそ朝まで起きていようか。

いっそ家を抜け出して夜の外に出てみようか。

星も見えない空の下。

思い立って窓を見るとぽつりぽつりと雫が付いていた。

やがてポロポロと雨音が鳴り始める。

……今日は辞めとこう。

ふと窓から視界を逸らした瞬間、チラッと何かが光って見えた。

もう一度窓を覗くと、雨雲の隙間から月の光が漏れ始めていた。

私はスマホを取り出してドビュッシーの月の光を流し出す。

優しいピアノの音色が私の空間を取り囲んでいく。

やがて雲に隠されていた月がハッキリとその姿を見せた。

あぁ……今ならぐっすり寝れそうだ。

私はベッドに横になる。

耳からは月の光と、私の呼吸音と、遠くの赤ちゃんの夜泣き声と、猫の鳴き声が聞こえてくる。

それら全部をひっくるめて瞼で蓋をする。

頭の中で弾けて消えてしまわない様に。

一緒になって夢の中へと連れて行く。

おやすみなさい。

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