第12話 動機

どうして人を殺してはいけないの?


それは法律で決まっているからさ


その法律を決めた人はもう居ないじゃない


モラルというか倫理観として人を殺すのは悪なんだよ


なら私は悪でいいわ。だから人を殺したい


君が人を殺せば、大勢の人を悲しませる


大勢の他人が悲しんだって、何も変わらないし、関係ないわ


難しいな……君を納得させる、人が人を殺さない理由ってのは


真意としては「自分が殺されない為に」なんだと思うわ


自分が殺されない為?


人を殺すのが一般的になって、自分が誰かを殺すのが日常的になって、でもいずれ自分も誰かから殺される……そんな生活にならない為に、法律があるのでしょう?


そうだな……自分が誰かを殺すのも、誰かに殺されるのも嫌だなぁ


人は進化の過程で知性が動物よりも優れた物になって、生と死を知った


生きている事の重み……みたいなものなのかな


他の動物以上の生への執着心かしら


記憶力が発達して、自分が生きてきた積み重ねを失いたくないと思う感じかな


そうね。だからこそ最大の禁忌なのよ


人を殺すことが、か


相手が生きてきた証を、積み重ねを、丸ごと掻っ攫ってしまうのだから


そんな最大の禁忌を君は犯したいわけ?


ええ。ダメと言われたら余計にやりたくなるでしょう?


奪い取ったものは決して棄てたり、誰かに渡す事も出来ないんだよ


むしろ逆よ


えっ?


私が殺して奪ったのよ。そう易々と渡してたまるもんですか

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る