第4話 言葉

素晴らしい旋律の演奏も、著名な画家の描く絵画も、名だたる芸術家が作る作品も、歴史に名を残す文豪の一文だって、彼らの頭の中にあった時が一番美しい本物だ。頭から離れてアウトプットした瞬間、それらは紛い物の虚構となる。

言葉ってのは尚更そうだ。

言葉にして発すれば、その時点で嘘になる。

言葉として書き記せば、滑稽な程醜くなる。

言葉にして吐き出せば心が楽になると言うけれど、言うほど言葉ってのは心と直結してないものだ。

言葉にせずに黙していた方が、心ってのは形成されていくものなんだ。

じゃあその心を、頭の中にあるそれを、どうやって伝えるのか。

答えは簡単、言葉を使うな。

歌を唄うなら言葉じゃ伝わらない歌詞を唄え。

文字を綴るなら言葉にならない想いの丈を綴れ。

言葉に縛られなくなった時、きっとそれは紛い物では無い本物に値する。

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