第2話 物語

人を殺したかった

いつからかは分からない

理由や動機も特にない

衝動的に殺意がお腹の奥でドロドロと溜まっていくのが分かるんだ

腹の底で生まれたどす黒い感情は、その熱を保ったまま胸元へと込み上がってきて、心臓の脈動に合わせて全身を駆け巡り、僕の体内を循環する

指先から足の爪先まで殺意で満たされる

そうした時には不思議と脳内はクリアなもんで、水炊きコーヒーみたいに真っ黒なのに透明な感覚がある

それを掬い取って今度は紙に染み込ませていく

するとそれは文字となり、文章となり、最後には小説となる

出来上がった物語は人を殺すお話だ

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