小説もどき
刻谷治(コクヤ オサム)
第1話 遺書
凄く良いことが起こった時
凄く幸せな日々を過ごした時
この思い出を取っておきたい時
僕は白紙と万年筆を取り出して書き連ねる
きっと書き上がったそれは
世間一般的に言われる僕の遺書になる物だ
もしも僕が死んだのなら、ここにある小説もどきの作品達も一緒に埋葬して欲しい
本来なら完成させて世の中に出したかった作品達だけれど、きっと僕が生きている内には完成しないかもしれない
完成させたら誰かの物になってしまいそうで、未完成のまま此処に並べて飾って置きたかったんだ
僕にはかけがえのない親友がいて、多くは無くとも友人がいて、そのどれもが宝物だった
家族や親戚、恩人、恩師などに出会えた事
僕の大好きだった人達が亡くなった事
全部が僕を作って此処までに至れたんだと思う
感謝の言葉や世話になってきた人を書き連ねると長々と続いて中々終わらないエンドロールみたいになるし、言葉で表そうとすると安易になってしまうから書き記したりはしないけど、とても僕にピッタリで最適で自分らしい人生だったんだ
僕の為に泣いてくれる人がいるなら嬉しい
僕の為に笑ってくれる人がいるなら尚更嬉しい
僕の事を覚えておいてくれる人がいるなら嬉しさの余り死んでしまいそうなくらいだ
だから最後に言わせて欲しい
最後に残させて欲しい
僕は人を殺したかった
それが叶わない世界だと分かっていた
本気で人を殺したいと何度も何度も考えていた
でも、そうしなかったのは貴方達がいたからだ
貴方達が僕をずっと引き止めていたんだ
だから殺人犯が殺人を犯さずに死ぬことで、ほんの少し平和になった世界で、これを読んでいる人、聴いている人は安心してその先の人生を歩み、生きてくれ
僕は独り、地獄で待っている
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