夕涼み

姫亜樹(きあき)

夕涼み

真夏の夕闇の中を

電車の音が通り過ぎていく

異常がつねになった暑さの中

じんわりと続く

軽い頭痛と眩暈の奥で

「こんなに夏に弱かったっけ?」

と、思いながら

缶ビールを開ける


ふと

窓の外を駆けて行く子供たちに

幼い自分を重ねてみる


何処までも続く緑の田

青い空を横切っていくつばめ

風に揺れる向日葵ひまわり

泣き叫ぶ蝉の声に負けない

懐かしい笑い声たちが

夕日に向かって駆けていく

失くしてはいけないものだと

とっさに思い

捕まえようとした手に

ただ

気怠けだるさだけがまとわりついた


「大人になる」ってのは

こうゆうことなんだと言い聞かせ

缶ビールを飲み干し

窓を閉めて

エアコンのスイッチを入れた

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夕涼み 姫亜樹(きあき) @Bungo-2432Da

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