かつて善人だった少女は復讐の道だけを突き進む

仲仁へび(旧:離久)

プロローグ



「なぜ?」


 暗闇の中で聖女は思う。


 かつてその聖女は多くの人間に慕われていた。


「なぜ」


 暗闇の中で聖女は問い続ける。


 かつてその聖女は多くの人間に囲まれていた。


「なぜっ!」


 暗闇の中で聖女は問いかけ続けた。


 かつてその聖女は誰もが憧れる存在だった。





 それなのに、今の彼女は、真っ暗な部屋にとじこめられていた。


 そんな何も見えない暗闇の中で、聖女は誰にも届かない問いかけをずっと繰り返す。


 終わりの見えない言葉がとぎれたのは、聖女の声が枯れた頃だった。


 けれど、喋れなくなった聖女は心の中で問いかけ続ける。


 終わらない疑問は、やがて力となり、呪いとなった。


 そして、閉じ込められていた聖女の力となった。



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