君の騎士 ~君を守るために~
無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【1部 春の巻 編】
プロローグ ~君を守る決意~
1人の幼い女の子が泣いている。涙をぽろぽろ流し、声を失ったかのようにただ涙が流れている。
そして、とても小さな身体を震わせ、泣いていた。悲しいと言うよりは、怖くて怖くて仕方がないと言うように。
泣いている女の子は、まだ4~5歳ぐらいだろうか? 肩ぐらいまでの髪の長さで、少し癖毛のようである。
髪の先がくるくると、内側に緩くカールしている。髪の色は、染めているのかと思う程に、明るい茶髪であった。
光の当たり具合によっては、金髪にも見えてしまう程に…。
彼女の顔は、彼女自身の手で隠しているうえに、もう1人いる同じくらいの子供が、そっと抱きしめているので分からない。
唯、泣いているのが分かるだけ。手の隙間から、綺麗な涙が太陽の光を浴び、反射しているのが見えるから。
そして、そのもう1人の子供は、泣いている女の子を宥める様に、少女の頭を撫でながら、「もう大丈夫だから」と声を掛けている。
まるで、母のように、姉のように、労るように…。そっと、優しく、声を掛け続ける。大丈夫だよ。ぼくが居るから、と…。
もう1人のその子は、髪の色は日本人らしく、黒々とした綺麗な黒髪で、天使の輪っかが出来ている程、艶々した感じであった。
髪は長く伸ばされていて、手入れが行き届いたようなサラサラヘアーである。
顔がまだ幼さの残るその子は、泣いている女の子と同じ4~5歳だと思われた。スカートはではなく、ズボンを履いている。
唯一、髪の長さで女の子だと思われた。しかし、中性的な顔の所為で、とても愛らしい男の子にも見える。
そして、1番の問題が、その子が自分の事を「ぼく」と語っていることであった。
その子は、まるで誓うように。2度とこんな事が起こらないようにと、「ぼくが、絶対に守るよ。」と約束するのだ。
強い意志を持って。自分自らにも言い聞かせるかの如く。絶対に守るよと、何度も繰り返している。少女が泣き止むまで…。
暫くの間、泣き続けていた女の子は、やっと泣き止んで笑顔になった。心の底から安心したような、ホッとした顔で。とても愛らしい表情で。
顔を上げた少女の顔が、やっと顔が見えるようになる。とても、綺麗な女の子であった。日本人離れした、まるで西洋のお人形のようで。
この少女には、全く見えていなかった。目の前の少女というか少年のような、不思議なその子しか。
あたかも、他の誰も居ないとでも言うように。目の前の自分と同じくらいの人物だけを見つめ、笑っていたのだった。
そして、この少女に答えるように、其れまで心底心配そうな顔をしていたその子は、この少女に負けない程の、誰もが見惚れるような笑顔を、返したのである。
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少し離れた処から、じっと2人の様子を見つめている者が居た。それは、まだ小さい子供であった。あの2人と同じくらいの子供で。
よく観察すれば、この子供が、
髪の長さと服装が違う以外はソックリだと、2人を見た誰もがそう思うだろう。それ程に、彼方に居るその子と
此方に居るこの子の方は、髪の長さは、肩までもないベリーショートで、同じくサラサラヘアーである。
服装は同じではないが、ズボンを履いているのは同じで。この子も、髪の長さで言えば、男の子に見える。
しかし、活発な女の子にも見えなくない。そのぐらい、中性的な顔であり。
この子は、何とも言えないくらいに、複雑そうな表情をしていた。悲しそうな、納得していないような。
怒っているような、情けないと思っているような。そして…、心底困ったような。色んな感情が混じった表情に見えた。
「別に___たのが___でもいいんだけど。何で___が___るんだよ。」
隣にいても、聞こえないぐらいに小さく呟きながら、苦虫を噛み潰したような顔をして。何か、納得が出来ていないような言葉を呟いて。
どうして、こうなったんだ。何で、こうなったんだ。
そう、何度も独り言を言うように。
彼方に居るその子が、声を掛けるまで。この子は、唯ジッと2人を見つめて、動けないでいた。
どうして、自分はここにいるのだろうと、思いながら。唯、見守るしか出来なかったのだ、と。
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