奇譚「群鶏」

棗りかこ

奇譚「群鶏」


鶏小屋しか、空いてないよ。


初めての中国旅行で、安岐は、家の女に言われた。

しぶしぶ鶏小屋へ、行ってみると、大勢の鶏が、小屋の隅に固まっている。


猿団子というのは、聞いたことがあったが、鶏団子という感じだな…と、安岐は、笑った。


床は、鶏小屋のわりに、結構小奇麗に掃除され、心配した程のこともないかもと、安岐は、ほっと胸を撫で下ろした。


ただ、異様といえば、小屋の隅の鶏達。 ここっ、とも、言わず、身動きもしない。


だが、大騒ぎされるよりはマシだな…。安岐は、安直にそう思った。

翌朝。 目を覚ますと、安岐は異様な目つきの鶏達に囲まれていた。


わあああああ。


慌てて飛び出した安岐は、女に、卵を渡された。


その卵をどうするべきか、手の中でしばらく転がした安岐だったが、 朝ごはんかわりか…。


女の親切なんだな、と思い、その卵を飲んだ安岐は、

あれよという間に、鶏に変化していった。



その日の夕方、 次の旅人が、また訪れた。


鶏小屋でよければ、泊まっていきな。


女は、鶏小屋へ案内した…。




群鶏…。




-完-


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奇譚「群鶏」 棗りかこ @natumerikako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ