雌竜になるだけならまだしも…ガチ女体化とかないわ…

@fatle

プロローグ ー表ー

「これを見たまえマーリン君!!」


意気揚々とドアを開け放ち、家の中に意気揚々と入ってきた黒髪黒目で中肉中背の男。

その手には何かが握られていた。


——コトッ


マーリンと呼ばれた野暮ったいローブを着た金髪碧眼のいかにも「魔術師」って感じの男の前に豪奢な作りの短剣が置かれる。


「……アーサー…まさかまた怪しい魔道具を買ってきたんじゃないだろうね?」


マーリンがアーサーの衝動買い癖を思い嘆息する。

実はアーサーが起こすこういうケースは珍しくなく、マーリンと一緒に行動を始めてからは3日に1回のペースでガラクタが増えていく。


「何言ってんだマーリン!こいつはめちゃくちゃ凄い魔道具なんだぞ?!」

「ふーん。じゃあ効果の程を聞いても?」


正直、マーリンはアーサーの癖に慣れていたのでさっさと流して魔術の研究をしてしまおうと思い、ガラクタの効果を聞くことにした。


「聞いて驚け?【人化】だ」

「…あれ、似たようなの買ってなかった?」

「え?あー!あれね!【擬人化の護符】ね!」

(忘れてんじゃん)

「違うんだ!この【人化の短剣】は【擬人化の護符】とは一線を画す能力があるんだ!」


…何故かアーサーが先を言わず貯めているので早く研究をしたいマーリンはしびれを切らし先を促した。


「…早く言え…」

「ふっふっふー…この剣はな!完璧に人にしてしまうんだ!どんなクリーチャーでも!完璧に!」

「…それ護符でも良くない?」

「良くない!あれは持ってなきゃ発動しないが!こいつは刺されると短剣が魂と完璧な融合を果たして完璧に!化け物の余地などなく!人間にしてしまうんだ!」

(どう言われても護符でもいいんだけどなぁ…そういえば。)


マーリンは説明の中、これまでガラクタたちが1度も使われたことがないことを思い出した。

なので一応何に使いたいのか聞くことにした。


「…何に使うんだ?」

「ふっふー…聞いて驚け!霊剣山の竜に使ってくるんだ!」


聞いて驚けというフレーズからの使う対象の名前に思索し、数瞬唖然とするマーリン。

次第に表情が強ばっていきすごい剣幕でアーサーを止めに入った。


「悪いことは言わない…やめとけ。その短剣はもっと手頃な相手に使うんだ。さすがに相手が悪すぎる。それに僕達の勇者の刻印だって目覚めたばっかりじゃないか。君が王国1の剣士だとしても…無理だ」

「だいじょーぶだいじょーぶ!仲間になってもらって、一緒に魔王を倒してもらうんだ!」

「いや!竜だって魔王の生みの親である邪神から生まれた存在じゃないか!馬鹿なのかい?!」

「大丈夫だよ!」

「はぁ?!あ、おい!どこに行くんだ!」


短剣を片手に意気揚々と出ていこうとするアーサーにマーリンが問うと…


「竜のところさ!」

「ばかやろー!!!」


バタム…


扉が閉まりマーリンとアーサーが住む家屋に静寂が戻ってくる。

幾らか思考を逡巡させ…


「まあアーサーなら何とかするか…ほかの勇者も集めないといけないよなぁ…研究しよう」


棚から薬を取り出し研究机に戻っていくのでした。

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