第4話「突然やって来た統合失調症」
7人の登場人物の愛憎劇に絡まれた私は統合失調症を発症し、ラグビーワールドカップも天皇即位礼も閉鎖病棟で過ごすこととなった。
その結果、2ヶ月と2週間の入院を経て情熱も友情もどこかに忘れてしまったが、それでも嫁と両方の両親、兄弟、極一部の親友は私を暖かく迎え入れた。
そして気付けば身近に社長が2人もいて、会長が1人いたという事実を知らぬまま、令和元年12月12日。私はようやく退院する。
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閉鎖病棟隔離室の実態
初めて入れられた閉鎖病棟の隔離室の迫力はとてつもないものだった。統合失調症を発症した私は二重に鍵をかけられる六畳くらいの部屋に閉じ込められ、朝昼夜の三食を部屋で食べさせられることになった。
しかし何故こんな事になってしまったのか?
思い返せば最初の入院の際、私と患者達の集まりは病院外へと発展して、いつの間にやら元上司、友人、旅先で関わってきた外国人までもがごちゃ混ぜになっていた。そしてR君主導の下、皆んなでハワイを狙う会社を立ち上げようとしたことが全てのきっかけだった。
やがて本当に事務所が設置されるに至り、誰のための何のための事業なのか分からなくなった結果、事態は急変していくことになる。
その結果、暴力団の襲撃と誤認して警察官に模造刀を抜刀した私は留置場に入れられることとなり、精神病院の閉鎖病棟に送られた。
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令和元年9月28日。
日本中、世界中の友達を巻き込んで始まった起業騒動は、それぞれの価値観と社会観、欲望や幸福度、精神世界が混ざりに混ざってカオスな世界観へと発展としまうと共に、ババ抜きのババを引かされる形となった私が強制入院すると言う形でピリオドが打たれた。
そして2ヶ月と2週間の幽閉のため、僕はすっかりおとなしくなってしまった。そんな私と妻の幸せは、お互いが健康に今を生きてるだけでもう充分。と言うことで満足している。
そして謎の事務所を遺したまま、それぞれの夢を誰が引き受けるか分からない形で計画は進行し続けて、それぞれがそれぞれの幸せを追い求めて今を生きている。
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閉鎖病棟隔離室の記憶。
敷布団と掛け布団と枕しか無い部屋に、剥き出しとなった便器がポツン。約六畳くらいの部屋から見える外の景色は二重に鍵かけられたドアの小さな窓の向こうのみで、所有を許されている私物はトイレットペーパーのみだ。
現代版座敷牢ともいえる二重扉の部屋は、歴代患者達が傷付けたり落書きした痕跡で溢れ返っていて、便器の近くはとても汚く悪臭を放っている。
2019年最初に任意入院した際、初めから外出を許されている病棟にいた私が初めて味わう閉鎖病棟隔離室は、前回知り合った仲間達が経験してきた登竜門。実に何も無い空間だ。
ここから始まったR君の夢希望の産物に様々な人達が集まった結果、それぞれの思惑が絡みに絡んでONE TEAMになったり、かと思えばバラバラに砕けて、振り出しに戻る。
退院後の私の脳内には、スチャラカチャカポコチャカポコチャカポコのサウンドがただ、聞こえるのみ。
それにしても幸せとは何だ?普通とは何だ?社会とは何だ?
外を自由に歩けて飯を食べれたらもう充分幸せではないのか?配偶者を持つ身の私は一体何を高望みしたのか?
ハワイ、東京、ドバイ、シルクロード。
欲望は恐ろしい。
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