第6話 新たな場所

俺たち新兵の中に走った衝撃は大きかった。静かに泣き崩れる者、もぬけの殻で座り込む者…しかし、トゥーティさんはそういった新兵たちをそっとしておいた。そう、トゥーティさんは悲しみに暮れる騎士など山のようにみて来たのだ。…そして、自分もその一人であった故に。トゥーティさんが、俺の側へ来て言った。

「分かるだろう?いくら騎士と言えどみんな人間なんだ…」

トゥーティさんは俺の肩に手を載せ、真っ直ぐな眼差しで俺の目を見る。しかしその顔はどこか曇っているようだった。

トゥーティさんは幹部のひとりに呼ばれ、その場を後にした。


刑執行の猶予が明けた罪人のように兵舎を後にする新兵の一団。勿論、それを率いるのはトゥーティさんたち幹部だ。久し振りの騎士たちの大行進に興奮する子供たちをよそに、大人たちは冷酷な目を向け、口々に言った。

『あんな子供に何が出来るっていうんだい?』『どうせみんなすぐにくたばって死人の大行進になるだろうに…』

込み上げる悔しさや怒りを押し殺し、ただトゥーティさんの背中を見て歩き続けた。

暫くすると大きな砦が見えた。

「ここが最前線の砦だ!これから君たちはここで国を守ってもらう!」

トゥーティさんの声が響く。すると砦門が開き、一団は中へと進む。そこに整列し、前を見やる。すると壇上にはトゥーティさんの他に人の姿がある。俯いていて、ここからでは顔が良く見えない。そうこうしていると、その人が立ち上がった。その時俺は記憶の中で彼女を見つけた。そう、俺が王城へ向かう際に横を通っていく馬車に乗った少女だった。

(何故あの子がこんなところに…?)

少女が最前線にいる事に驚いたのは俺だけではないらしい。新兵たちはたちまち騒ついた。

トゥーティさんが言い放つ。

「これから君たちは、彼女の下で戦ってもらう!」

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