第4話 王城

宿舎を進み長い廊下へやって来た。アチェルさんは大きな咳払いを一つ。そして続けた。

「これから君はこの長い廊下を経て王城に入る。この先は高貴な方々にして偉大な方々が…」

すると奥から誰かが歩いて来た。

「やあ、よく来たね。待っていたよ。」

その声に即座に反応して敬礼するアチェルさん。そこにいたのは、トゥーティさんだった。

「アチェル、声が大きいぞ。普通に出来ないのか…」

トゥーティさんが溜息を一つ。

「いや、自分はこういう堅苦しい事は慣れなくて、緊張するというか…」

溜息を一つ。


ここでアチェルさんとトゥーティさんが交代し、トゥーティさんに王城を案内してもらう事になった。

「よし、案内するぞ。ただ、なにぶん広いから離れるんじゃないぞ。」

トゥーティさんにそう言われて周り始めたが、もうどれくらい歩いただろう…だいぶ疲れてしまった。延々と歩き、延々と説明を聞いた。

「どれ、王城探検はお開きにしよう。さて本題だ。」

トゥーティさんがいつもの勇ましく真面目な表情に戻った。

「明日、とうとう入団試験がある。今晩はゆっくり休むといい。あまりこういう言い方は良くないのかも知れないが、あの代稀に見る団長の息子さんが騎士団に志願してくれるなんてことは、光栄且つ団としても有難い限りだ。」

トゥーティさんはどこか懐かし気に言った。そして俺は心の底から応えようと思った。こう言ってくれる人がいることが当たり前じゃないんだ。大勢が俺を見ている。俺は…

「トゥーティさん!…いや、団長!もったいなきお言葉、ありがとうございます!」


グランディオゾ城内の某所______

「このところ頻繁にどこかへ出掛けておるようだな」

国王が険しい顔をして問う。しかしそれに応じる様子がない。聞いているのかと叱責すると、男は仕方のなさそうに方を開く。

「ええ、父上。どこへ行こうが勝手ですよ。荒くれ者の、出来の悪い皇子などお嫌いでしょう。いまさら私に興味がおありで…?」

(皇子とは名ばかりで弟のトランクばかりを大事にしてきた。それなのに…!)

そうして強く机を叩く。

「教会に参ることは良いことだが、礼拝ではないようだ。…良からぬことに手を出しておらぬか…!?」

国王…父の問いに答えることなく皇子は王の居室を後にした。

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