1話 morning glow -2
「起立!礼!」
「ありがとうございました!!」
この日最後の挨拶を終える。
そしてこれは放課後に入る合図ともなる。
俺はこれから職員室に行かなければならない。
先生からありがたいお言葉を頂戴しなければならないからだ。
先生からのラブコールだよね、参ったな、ハハ(涙)
職員室は今いる二年生の教室とは違う校舎に構えられている。
たどり着くためには、校舎と校舎をつなぐ渡り廊下を通って行くか、一度下駄箱がある通用口までいって、そこから職員室がある校舎に行くしかない。
今はまだ放課後に入ったばかりなので、まだ人も多く、すぐに家へ帰る者、「これからどうする?」と友達と帰りがてら遊ぶ計画を立てている者、部活へ行こうとする者などなど、それぞれがそれぞれ立ちこめていて、割とざわつく時間だ。
俺も予定がなければすぐに家に帰るものだ。
職員室。嫌な名前だな。
これが体育館裏であったりとか、体育倉庫だったりだとか、駅前のホテルであれば、鈴木選手並みの反射神経でスタートを切って駆け出していくものの、そもそも相手は男性であり、それが普段はあまり近寄る用もないような職員室であれば、足にウェイトをつけて練習する鈴木選手の真似をついついしてしまう。
そんな練習をしているかどうかわからないが…、てか、してないね、絶対。
せめてもの抵抗をしようとしてノロノロと帰り支度をし始めた。ちょっと心配になったので、指でキツネさんを作り自分の方を向かせ、甲高い声で小さく「スロウ!!」と唱える。
これで、遅い!と叱られても回避できる理由を作れたので、清々と支度を始められた。
カバンが重くなるのが嫌なので、教科書は学校に置きっぱなしだ。ロッカーに預け、机に入れ、どうにかしてカバンを軽くしようと常日頃意識している。しかし、テスト期間だけは勉強しなければいけないので、持ち帰るのだが、やはり量も多くなり重くなってしまう。テスト、大嫌いです!!あと、長い休みの前にも持って帰らなければならないが、気持ちが軽くなるので教科書の重さなど吹っ飛びますね。休み、大好きです!!
なので、持って帰る教科書と言えば、明日小テストなるものがある授業の教科書だったり、宿題がだされた課題の関連した教科書だったりと限られてくるので、そう多くはない。なので、動きがノロノロとしていても、そう時間はかからずに支度は終わってしまう。それならと「確認、確認」とつぶやきながら、ロッカーと机とカバンとを見て回っている。
もしかして、端から見るとヤバいヤツなんじゃないの?俺…
時間にしては5分、10分の短い時間だが、気が付くと教室に残っているのは、クラスの人数の4分の1程度には減っていた。ざわざわしていた教室が割と静かになり、周りの会話も耳に入ってきてしまう。
「ねぇ、知ってる?あの噂…」
「噂?何の?」
「今休んでる神田さんの噂、なんか結構厄介なことになってる、って…」
「えっ、厄介なことって何?」
「ほら、4月始まってからすぐ休みっぱなしだけどさ、その理由ってのが、どうもイジメにあってたからって…。」
「へぇー、誰から?」
「風羽有希ってギャルグループのリーダー的存在の子いるじゃん?どうもそのあたりと関係があるって…」
『あははーー、それヤバくね~?』
廊下からいかにも楽しそうな声が聞こえてくる。
「あ、噂をすれば…」
「ヤバッ、行こ」
その話をしていた女子2人は彼女らグループを見つけるとそそくさとカバンを持って教室を出ていく。
教室に入ってきた風羽グループとすれ違いざまに、「おお、おつおつ、さよなら」とか挨拶程度の会話をしていた。実に楽しげだ。
そういう光景を見るとついつい顔芸をしたくなるのは、俺の悪い癖だろうと思い、見つからないように窓の方を向いた。
見られたらどんな因縁をつけられるか分かったもんじゃないし…
しかし、あれが女子2人が話していた『風羽有希』か。
髪は薄い茶髪で頭の上にお団子を乗せている。身長は160くらいだな。肌は日焼けを気にしているのだろうか、あまり黒くはない。顔はやはりギャルグループのリーダー的存在だな。可愛い部類だ。そして、アクセサリーが多いのも特徴だな。手首や足首に輪っかをつけている。あれって、付けてるとどうなるの?光るの?インターネットの最奥部でも守護してんの?実はギャルは厨二病の一種なのかもしれないな。
外見からはぶっちゃけ可愛い(援交してそう)としか思えない女の子である。
大事なことなのでもう一度言うが、風羽有希は可愛い(援交してそう)ということだ。
スクールカーストの最上位は半端ねぇっすよ。詳しくはスクストで検索してね!
そして、彼女のグループも可愛い子揃いである。名前知らんけど。
多分告白されたら、付き合っちゃうけど、罰ゲームだったからごめんね、って断られちゃうレベル。
てか告白してきたのそっちだよね?(涙)
この世は理不尽でできているって、どっかの誰かが言ってたぞ。なんて悲しすぎる物語だ…。俺は騙されないぞ。
「でさー…」
「え、それマジー?最高!」
位置からして俺の斜め右下、教室の最後部中央に陣を取りお話を続けるギャルグループは随分と盛り上がっている。
触らぬ神に祟りなし。台風来ても川は見に行くな。先人達の言葉を思い出し、俺は教室を後にする。出来うる限りの神経を使い自然に見えるように。
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