とりま、異世界カーストで成り上がってみた!

mitsuzo

プロローグ

第1話「プロローグその1」



 俺の名は『間宮義人まみやよしと』。



 今年で二十歳になる俺は普通ならば大学生、または社会人として働いている年なのだが大学進学はおろか仕事さえしていない。まあ、いわゆる……『引きこもりニート』というやつだ。


 小学生の頃、俺は一度、見たり聞いたりした知識や経験は忘れず記憶に残るという特技のおかげで周囲の子供と違って勉強が良くできていた。その為、周囲の大人たちからは『神童』と呼ばれ、同級生からも『すごい、すごい!』とチヤホヤされるようになっていた。


 最初、周囲の同級生や大人たちから評価されることに喜びを感じていた俺はさらにその期待に応えようと頑張り、気づけば小五の頃には『一流大学』に合格できるレベルになっていた。


 しかし、そんな『早すぎる成長』で賢くなり過ぎた俺の速度と、周囲の……特に同級生の期待値速度には大きな乖離があった。


 周囲の大人たちは俺の成長に驚嘆と共に喜んでくれていたが、それとは裏腹に同い年の子たちからは次第に『自分だけ目立ちやがって』『調子に乗ってる』『生意気な奴』という目で見られ、疎まれるものへと変化していく。


 結果、小六に上がる頃には友達はおろか、誰も俺と話をしない……いわゆる『完全無視』『空気』と化して完全にクラスで孤立。そして、その年の夏休み明け――俺は学校に行くことを辞めた。


 その後、周囲の大人たちは俺を説得しようと家まで来たが俺は頑なにそいつらを拒み続けた。すると、今度は同級生だけでなく周囲の大人たちも『生意気な奴』ということで陰口を叩くようになった。


 そんな『人の変化』『空気の変化』に怖くなった俺は、人と接することをさらに避けるようになる。学校に行かなくなった当初はちょっとした買い物やコンビニに行くくらいはしていたが、この時から俺は家から出ることを完全に辞めた。


 これが俺の『引きこもり』の始まりである。


 それから八年……俺は家から一歩も外に出ることはなかった。


 そんな二十歳になった俺に対して両親は怒るどころか、自分から外に出たいと思うまではそのままでも構わない、とむしろ優しく接してくれた。


 そんな優しい両親に……いや、だからこそというべきか、俺は『両親に合わせる顔がない』と良心の呵責から自虐的になり、気づけば家どころか部屋から出ることも辞めた。テレビでたまにやる『引きこもり問題』の場面としてよく見られる『部屋の前に食事が置かれるアレ』的な状態が俺の日常となっていた。


 そんな引きこもりニート生活を始めてから八年ちょっとした昨日の夜――突如、関東地方に巨大地震が起こり、俺はその地震の影響で天井の瓦礫に押しつぶされ、二十年の人生をあっけなく終えることとなる…………はずだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……※&%&#=##&%##……!!」

「んん~……な、なに?」


 女性の声が聞こえたが何を言っているのかよくわからない……と思った瞬間、頭の中に誰かの記憶がどっと流れ込んできた。


「!? う……うぐぐ……」


 脳内に流れ込んできた情報の塊や波のようなものに俺は激しい頭痛に見舞われたが、三十秒ほどすると脳がそれらの情報をすべて受け入れたようで頭痛は完全に収まった。すると、


「!? クライブっ!! お父さん、クライブが起きたわよ~~!!」

「んん……クラ……イブ?」


 なんと目の前の女性の言葉が理解できるようになっていた。


 そんな中、俺は少しずつ意識がはっきりしてきたのでゆっくりと目を開けてみる。すると、目の間には二十代前半くらいの金髪の女性が立っており、また周囲を見る限り、ここは電気の無い部屋であることもわかった。


 ここは……いったい?


 俺の意識がさらにはっきりしてきたその時、


「クライブっ!!」


 大男が部屋に大きな声でドタドタ入ってくるや否や、慌てるように俺のところにやってくると顔を上からジッと眺めた……ち、近い。


「クライブ……目を……覚ましたんだな。よかった、本当に……よかった」


 目の前の大男は俺の頭を撫でながら大粒の涙を流し、一語一語ゆっくりと言葉を紡ぐように俺に向かって話す。横ではさっきの女性も一緒に涙を流している。


「……父さん、母さん」


 すると、さっきの記憶の流れからだろうか……二人のことが理解でき、それがそのまま言葉に出た。どうやら目の前の男性と女性は俺の父親と母親のようらしい。


 そして、俺はふいに横にある窓ガラスに目を向ける。そこには……七歳くらいの金髪の男の子が映っていた。


「これが……俺?」


 ちょっと前に地震で死んだはずの俺は、どうやら『クライブ・W・フォートライト』という金髪の男の子に『転生』したようだ。


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