【未完結】異世界帰りした英雄はソシャゲ運営で最強ビジネスはじめます!

ファンタスティック小説家

第一章 大英雄の帰還

第1話 帰還、お祝いの美少女軍団

 

「ご苦労であったな、大英雄よ。これにておぬしの使命は終わり、世界救済の任を解くこととする!」


「はぁ……ようやく、ようやく終わるのか、この魔神討伐とかいう頭のおかしい宿業しゅくごうが」


 死にたえた崩壊の幼体ようたいころがる最後の間。

 世界の終末をかけて、巨悪とあらそった荘厳なる舞台に尻餅をつく。


 ほんとうに、ほんとうに長い戦いであった。


 ソシャゲにハマり、サラ金、闇金に手を出してまで低次元世界に囚われた嫁を迎える事にヤッケになっていた前の俺は、

 職場のムカつく上司が単発ガチャで嫁を引き当てたことに発狂して、会社を脱走、そのままトラックにはねられ死亡するという、惨めすぎる最後をむかえて、


 俺の人生の第二章は、まぁ、説明するまでもなく異世界に転生してはじまり、説明するまでもなく、魔の親玉を倒すことを使命とされて、5年修行、45年かけて、前世での加齢を更新しながら、魔神を討ち滅ぼし、いままさに使命の終幕を迎えようとしている。


 もう一度言おう。

 ほんとうに長く険しい戦いであった、と。


「大英雄よ、我らは忘れない、おぬしの功績を」


 いままで導いてきてくれた、家族のような存在の賢者はそう告げ、俺の体を枯れた指でさす。

 すると、俺の体をおおっていた最終決戦仕様のオーラは霧散していき、肉体が淡く光りだすと、だんだんと影が薄くなりはじめた。


 旅の終わり。

 すなわちこの夢からの目覚めだ。


「大英雄よ、おぬしとの初めの約束であったな。本当はダメなのじゃが、どんな物でも、そちらの世界に持ち帰ることを許そうではないか。特別じゃ」


 なんでも、だが、特に持ち帰りたいものはない。

 苦なく穏やかに残りの人生を過ごせれば、それだけでいい。


「ん、そうだ、もし何か持っていっていいと言うなら、俺の能力のなかから容量いっぱいに『お土産』を見繕ってくれ。何か新しい事をして余生をすごしたい。役に立ちそうなやつを頼む」


「ふむ、そうか。ともすれば、やはりおぬしの十八番おはここそが相応しいじゃろう」


 賢者はニコリと微笑み、満足げにひとつうなづいた。


「では、さらばだ。ほんとうにありがとう、大英雄。世界を違えても、きっと達者に生きるのだぞ」


「それじゃあな、賢者。いい夢だったよ」


 俺たちはそう言って、肩を叩きあって別れた。



 ⌛︎⌛︎⌛︎



 虹彩があけ、視界を取りもどす。

 音がもどり、色がかえり、肩は彼の手の感触を思いだす。


 さようなら、きっと、またどこかでーー。


「……戻ってきた、か」


 二世代古いスマホ片手に、俺は交差点の真んなかでつぶやいた。


 昼下がりの街並み、あまりにも懐かしい。


 50年ぶりの魔素のない空気で肺をみたす。


 この世界には、もう神秘はない。


 そうか、空気とはこんなに美味いものだったんだな。


 ーーブゥブウッ


「っ、危ねぇぇえ!」


 すぐ横から突っ込んでくる巨影を、咄嗟の前転回避でかすめる。


 間一髪。


 そうだった、あれが俺の死因なのだったな。


 あの自動運転オートマチックに轢かれて死んだのを、さっき思いかえしたばかりではないか、俺。


 む、にしても前転ひとつで歩道まで飛んでしまったか。


 記憶が正しければ、現代社畜リーマンにそれほどの身体能力は備わっていないはずだ……というか、異世界と肉体の利便りべんが変わってないような。


 半世紀もファンタジー世界で生きてきたおかげで、どうにも身体、あるいは魂のほうが大英雄の動きを覚えていると見える。


 あるいは、基本ステータスは能力とは別枠で、この世界に引き継がれているのかもしれないな。


「おいおいぃ〜アキラくーん、どうしたんだぁい、いきなり飛び出していってぇ〜。この俺が楊貴妃ようきひちゃんを当てたのがそんなに気に食わなかったのか〜?」


「っ」


 懐かしすぎる声に耳がぴくりと震える。


 部下の作成した資料にあえて誤植をいれたり、女性新入社員にする、本人の気分次第でいかようにも、他者の仕事も人格も侵すリアルの外道上司。

 人の不幸を楽しむタイプの悪性だ。


 彼の手にもつ画面、懐かしいソシャゲ、そこに映してくるのは、ひと目見てペロペロすりすり待ったなしの、ぐうかわドスケベSSRダブルスーパーレアの楊貴妃ちゃん。

 万人のプレイヤーが羨望する美少女は、たしかに上司のスマホにはお迎えされており、妖美な眼差しでこちらを見つめている。


「悪いなぁ〜、単発ガチャ、で出しちゃってぇ〜。ほらほら、単発〜、うっほほっほ!」


 見せつけてくるは、単発証拠のスクショ画面。


 だが、残念かな。

 もう悔しさなど微塵も感じないよ。

 俺の精神性は、50年にもわたる命のやり取りによって、天上の域に昇華されているのだから。


 そして何より、俺には


 教えてやろう。


「大英雄の基本ステータス、その幸運値はEXエクストラだとなッ!」


 手にもつスマホを操作、50年ぶりの10連ガチャを回し、おまけで引ける+1ガチャに至るまで、エチエチ楊貴妃ちゃんを当てて見せる。


 並ぶのは美少女ウイニングイレブン。

 これが神を祝福を受けた勇者のちからだよ。


「はぐあッッ!? あ、ありえないだろぉおお!? どんな奇跡だぁあ!? 隕石が晩飯の味噌汁だけを吹き飛ばすくらいありえねぇよッ! てか、どうして、どうしてお前なんかにぃぃい! 俺はわざわざ他人に見せつけるために3日かけて単発700連爆死までしたというのに……ッ! なんで、なんでだぁああ! うぁあああああ! いやだぁぁあああ! ママぁぁあああ!」


 俺をいじめる事を生業としていた上司が、顔面蒼白、幼児退行のはてに痙攣して、歩道を転げまわる。


 発狂してしまったか。ざまぁない。


 絶望を顔に貼りつけ、街路樹に頭をぶつけて気絶した上司をそのままに、俺は胸を張って爽やかな気持ちで会社へと足をむける。


「さて、俺の第三章、どんな人生を迎えるのか……ん、そういえば賢者はどんな能力を見繕ってくれたんだろうか?」


 自分の能力をひとつずつ、発動、寸止めを繰りかえし、数多あまたあった特殊能力のどれが残っているのかを確かめながら、50年ぶりのデスクに戻ることにした。



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楊貴妃(ようきひ)

中国唐代の皇妃。玄宗皇帝が寵愛しすぎたために安史の乱を引き起こしたと伝えられたため、傾国の美女と呼ばれる。世界三大美人の一人で、古代中国四大美人の一人とされる。Wikipedia参照2020/1/4

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%8A%E8%B2%B4%E5%A6%83


 異世界のステータス(基礎能力値)


 基本ステータスに、職者の修行におうじて、それぞれ値が加算減計されていき、結果的にランクに反映される。

 自身のランクは賢者にしか判別できない。

 地球にもどった今では、そのランクを知るすべはない。


 〜大英雄のステータス〜


・筋力 S

・技術 C

・神秘 C

ー神秘攻撃力 C

ー神秘抵抗力 C

・俊敏性 S

・耐久力 S

・幸運値 EX



 〜重課金アギトのステータス〜

:大英雄ベース


・筋力 A

・技術 B +

・神秘 EX

ー神秘攻撃力 EX

ー神秘抵抗力 EX

・俊敏性 B

・耐久力 B

・幸運値 EX


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