今日も町に夜が来た

夢月七海


 スマホのホームボタンを押して、時間を見る。十九時十五分。

 約束の時間から、もう十五分も過ぎているのに、香介はまだ来ない。


 ポケットの中にスマホを戻して、空を見上げた。

 闇の中へ溜息を吐くと、白い息になる。


 もうそろそろ、彼と別れてもいいんじゃないか、そんな気持ちが芽生えてしまう。

 別に、遅刻が嫌だという訳ではないけれど。なんかもう、疲れてしまったんだ、色々と。


 そんなことをぼんやり考えている私の左側から、靴がアスファルトを蹴って走る音がしてきた。

 弾かれたように、そちらを見る。香介だった。


 私と目が合った香介は、無邪気な笑顔で大きく手を振ってきた。

 それを見て、私はまた溜息をつく。だけど今度のは、一度目とは違う温度をしていた。


 彼の幸せそうな顔を見ると、しょうがないという変な諦めの気持ちが湧いてくる。

 結局私は、彼に振り回せる運命なんだと思いながら、香介に私も笑顔で手を振り返した。







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