第9話「終わった」

「おはようございます」

 いつも通り出勤し、自分の席に着く。荷物を整理し、パソコンを立ち上げると、続いて遅刻ギリギリに来るような人達が続いて来る群れが見える。

「澪ちゃんおはよう」

 私を呼ぶ声に慌てて振り向き、挨拶を返そうとすると、そこに居たのは同期の、ちょうどあの時の女の子だった。

「なんだ、誰かと思った。おはよう」

「誰かって何よ。あ、もしかして裕美さん?」

 ぎくり。いやまあ確かに最近はよく声もかけられていたが、だからといってそれを期待してなんて。いや、誰も期待してたなんて疑ってないし、これじゃあまるで私が期待していたような……。

「あれ、図星かな?」

 ハッとして顔を上げると、ニヤニヤと私を見つめる視線に射止められる。

「そんな事、ない。裕美さんとは何も無い」

 それだけ言って私はデスクに向かう。まただ、裕美との関係を否定する時、どうして胸が締め付けられるように痛むのだろう。こんな気持ち嘘だって、ずっと言い聞かせてるのに、それを超えるように訴える。

「なんか、ごめんね。引き離してどうこうしようとか、脅してなにかしようとか、そういうつもりじゃなかったんだ。ちょっとからかってやろうとしただけで」

 そうやって慰められると、余計に惨めな気持ちになる。私は、裕美が好きなのか……?

「だから本気で好きなら、私は応援したいな。ほら、掻き乱しちゃった罪悪感もあるし」

 急に肯定されても、私の心は混乱してしまうだけだった。

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