第19話「2人だけの世界」
「廃墟だな」
「廃墟だね」
ゴーストタウンと化した街並み。私とパートナーの瑞穂は、他に誰も居ない中で、そこに取り残されていた。お陰様で二人っきりで命の危機である。
「穂花、他人の家入るのって、なんて罪?」
瑞穂は適応力が高すぎるあまり、落ち着き払ってそんな事を私に聞く。私も早いもので、既に順応してきてはいるのだが、そんなことを気にする余裕はない。
「まあ、皆消えたんだし平気平気」
瑞穂への判断半分、自分への言い聞かせ半分にそう答えて廃墟へと入っていく。中は少しだけ埃臭いが、さほど汚さは感じられなかった。それもそうだ、私と瑞穂以外が消えてからあまり長い期間が経ったわけでもない。せいぜい二、三週間といった所か。
「お、穂花、ベッドだベッド」
先を歩いて部屋を探索していた穂花が、ベッドルームを見つけたようで、はしゃぎ気味に私に話し出す。いつもこうだ、寝床を見つけては二人っきりの世界で人目もはばからず、逢瀬を楽しむ。
「まあ、明日の我が身も分からないから、悔いは残さない方が良いけど」
私自身、既に助かるだとか世界が戻るだとかいらない希望は捨てた身だ。そしたら次に欲しいのは、その場限りの欲求を満たす事。話は早い、野生への回帰といったところだ。
「んだよ、ロマンねーな。愛し合うって嘘でも言えよな」
「はいはい、愛してるよ、瑞穂」
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