第5話「一心同体」

「迎えに来たよ、静流」

 友人との短い再会を終え、病院に迎えに行くと、待合室でじっと座って待っている静流を見つける。急いでそばまでより、隣に座って肩を撫でる。

「待ってた。結構早く終わったからね」

 私が触れると一瞬驚きに身が固くなるが、すぐに安心して身体を弛緩させ、穏やかな口調で報告する。しかし、それは申し訳ない事をしたな。連絡も出来ないから、ずっとここで待っていたのだ。きっと心細かったに違いない。

「ごめんね、ここで待っていればよかった」

 二人席を立ち、出口に向かって歩く。決して先も後も歩かず、隣に寄り添って。

「いいよ。依子にとって大事な人は、私だけじゃないんだから。皆と仲良くしないと」

 静流の諦めにも似たその言葉に、私は静流を抱き寄せる手を強くしてしまう。そうだ、静流が頼れる人は私だけだし、友人もそう多くは無いのだ。私が居なくなったら、どうなってしまうか、想像しただけで胸が締め付けられる。

「私は、静流に寄り添うって、決めてるから。他の誰よりも、静流を優先する」

 これは同情じゃない。慈悲でも慈愛でもない。まして憐れみなんかもってのほかだ。私は静流の事が好きで、だから一緒にいる。それだけは、信じて欲しかった。

「ごめんなさい。少し意地悪を言っちゃった」

 そういう静流の頭を撫で、いつも以上に寄り添いながら家に帰った。

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