探し物(4)
「あ、ああ、……」延寿が妙によそよそしくなった。
延寿が見送っている子どもたちが乗ったバスのずっと先、新しくできた橋のむこうから、奇怪な化け物がこちらに向かってくるのが見える。延寿の様子から、環も雷電もそれに気付いた。
「そろそろ私たちも帰りますか」
「帰るよ、帰る。ほら、雷電、帰るよ。お嬢ちゃんも、ほら、行くよ」
(このお嬢ちゃんの気を逸らせられたらな。見えなければ、見えないフリさえしてれば大丈夫なんだ。でもアレがここにきちゃったら、もう一度ここに取りに来るのは難しいな)
「ちょっと、なんで急に帰り出すんですか?私はただちょっと聞きたいことが……」麻美がみんなの後を追って帰り道の方を見たその時、
「な、なんですか!あれ」
男たちはびっくりした。気が逸れてくれたのはいいけど、よりによってアレを見てしまうとは!
「なんか、目が合っちゃったみたい」
「まずい、来ますよ!」
延寿は祠に突進した。体当たりして扉を開けて、祀られていた鎖を掴んだ。麻美のことなんて気にしてる場合じゃない。延寿は渾身の力で鎖を引きずり出した。(これだよ、これで新しい指輪が作れる)
みんな大急ぎで表の通りまで走った。そのむこうの橋の方からは速度を上げて金色の化け物がやってくる。それは大きな化け物を先頭に多数の付喪がぞろぞろとついてくる集団だった。先頭の大きな化け物は、まるでスクラップや粗大ごみの山を金色のスライムで包んだような姿をしている。そしてそのてっぺんに、西洋の道化の仮面のような顔がついている。その化け物がナメクジのように移動している。かなりのスピードで。
「あれはマジでヤバいぞ。震えが来そうだ」
雷電が延寿をつついて消えそうな声で言った。
[見てください。あいつらの通ったところ、あちこち腐食してます]
「おい、あれ酸じゃないか? あの後ろの方にいるやつ、あれだ。あれは何の付喪だ?」
「あとで考えましょう。とにかく急いで!」
逃げ道はここしかない。しかし、通りまで出たとして、逃げ切れる保証もない。環は覚悟を決めた。
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