手妻師たち(3)

  パチパチパチ


 館長は拍手しながら環に近付いてきた。


「どうもありがとうございました。さっきのお話で人柱とか人骨とか話してしまったのでね、どのようにフォローしようかと思っていたんですよ。いやいや、助かりました」と握手した。


「いえいえ、私たちも面白く聞かせていただきました」環たちは並んで頭を下げた。


 延寿は祠をしきりにのぞき込んでいた。環は帰りを気にしているのか、時計を見ている。つられて麻美も腕時計を見た。


「先生! 帰る時間ですよ。バス来ちゃいます!」館長は慌てた。「あ、本当だ。では私たちはこれで失礼します」


 麻美は環たちに聞きたい事があった。


「館長先生、私はちょっと確認したいことがあるので、この人たちともう少しお話をして帰ります。先に館の方に戻っていただけますか? 保護者の皆さんも、もうすぐお迎えに来るはずです」


「ああ、いいですよ。さあみんな帰りますよ。はい、整列!」


 館長は子どもたちを集めた。騒ぐこともなく子どもたちは並ぶ。「さあ、みなさん。お礼を言いますよ」館長の号令で子どもたちは「ありがとうございました!」と頭を下げた。この館長、子どもたちに好かれている。


 「それではみなさん。今日は本当にありがとうございました。もしよかったら、館の方にも遊びに来てくださいね」館長は子どもたちを歩かせて一番後についた。


「ああ、麻美君、あまり遅くならないように。次のバスというと時間も時間だから、直帰してもらって構わないよ。私は定時で帰るからね」


「あ、はい、館長、わかりました。戸締りはよろしくお願いします」


 子どもたちは延寿に「またねー」と手を振っている。全力でぶつかっても壊れそうにない男は人気者だ。延寿は手を振って見送った。


 麻美は環たちに向かって話しかけた。


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