同僚さんは昼ドラ展開を狙っている
「ところでこれからどうするんですか?」
同僚さんに手を引かれてテクテク歩きながら問い掛けました。
「どうするって?」
「私を恋人にしたのをネタに上司と殺し合うのでしょう? 職場に着いたら付き合い始めましたーとか宣言するんですか?」
それで手っ取り早く上司がキレて同僚さんと殺し合いを始めたら、それで私はお役目御免ということですよね。
……そううまくことが進むとは思えないのですが。
だって私は出来損ないのクローンなのですもの、こんなのが誰にどうされたとしても、あの人が怒るとは到底思えません。
「んー……いきなり付き合い始めましたっていっても説得力ないし、お前への好意は今まで隠してきたから信用されないだろうし」
「まあそうですよねえ……って、何を隠してきた、と?」
「お前への好意。上司と殺しあうのが大きな目的ではあるけれど、お前の事は結婚したい程度には好きだよ」
…………。
結婚したいはさすがにジョークでしょうかね。
「そうですか……ありがとうございます?」
「なんで疑問形? まーいいけどさ、愛だの恋だのそういうお綺麗な感情じゃないから」
ならどういった感情なのでしょうかと気になりはしたのですが、少し怖かったので聞かないことにしました。
「どちらにせよ、信憑性は確かにないですね……というか私の方がなんかやらかしたとか思われたらどうしましょうか……」
「むしろこっちが薬使って廃人にしてでもトリコにしたいくらいなんだけどね現実は」
「薬物の乱用はやめてくださいな」
廃人とか怖いこと言わないでくださいよ、ゲームできなくなるじゃないですか。
「信憑性の有無もそうだけど、付き合い始めましたって宣言するのはなんか微妙。どうせなら浮気がバレたみたいにしたい」
「うわきがばれたような……?」
「なんというか……こう……隠れて愛でてるところを偶然目撃されるような……もう何しても手遅れな状態で見つかってみたい……そういう方がキレそうだし」
「うーん……?」
何となくわかるようなわからないような……?
「わかりやすくいうとドロッドロの昼ドラみたいな雰囲気でバレたい。どうせなら修羅場がいい、その上で完勝して二度とお前に手を出さないように敗北感植えつけたい」
「あ、少し理解が深まりました。ああいう系ですか」
趣味が悪いなと思いつつ、何となくイメージが掴みかけてきました。
「だからしばらくはそれとなくそういう雰囲気を醸し出すような感じで」
「雰囲気を……」
具体的に何をすればいいのかわかりませんが、こそこそいちゃつけばいいということでしょうか。
「お前は別に普段どおりでいいよ。俺が勝手にひっついてるから」
今みたいにねと握ったままの手を軽く掲げられました。
「わかりました……」
とか話しているうちに職場である教会に辿り着きました。
今日のお仕事なんでしたっけ?
自然地区の魔物の討伐でしたっけ、それとも汚れ仕事……いえ、書類の整理でしたっけ?
いずれにせよ信者の相手をしなくて済むお仕事であるのはありがたいのですが、ここ最近の魔物は強いから骨が折れるのですよね。
まあ……何でもいいです。
お給金さえもらえれば、別にどうでもいいのです。
逆に言えば、お給金すらもらえなかったらこんなカルト教団で働いたりはしないのですけどね。
本当はもっとホワイトでお給金がいいお仕事に転職したいのですが……無理でしょうか。
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