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全裸の男女が二人ずつ、草一本すら生えていない砂の上に横たわっている。意識を失くし、眠っている四人の首の後ろ。髪で隠れるか隠れないかの位置には、数字が彫り込まれていた


輝かしい金色の長い髪。雪のように白い肌をした娘には《000》

短髪の黒髪。浅黒い肌をした青年には《001》

夜を思わせる艶やかな紫紺の長髪。透明感のある白い肌をした娘には《999》

茶色の短髪。白に黄を混ぜたような肌色の青年には《013》


雲一つ無い空には、太陽が輝き四人の皮膚をじりじりと焼いていく

二人の娘は日に弱いのか、少しずつ肌が赤みを帯びてきた


果ての見えない砂の大地の真ん中で、ただただ眠り続けている四人は、しかし、照りつける太陽の眩しさと暑さに少しずつ意識を覚醒させていく


彼らの遥か頭上

太陽より遥か上には特殊な加工を施された硝子が設置され、更に上には彼らと同じ姿をした存在が複数人。じっと様子を見つめていた


「少々薬が強すぎたのではありませんか?」


「適量だ」


最前列で様子を見ていた一人が、溜め息混じりに右隣にたつ青年に訊ねる。青年は不快そうに顔をしかめると、くしゃりと髪を掴んで離す

苛立ちを隠しもしない青年に苦笑すると、硝子から離れ振り返った


中央にはモニターと、大型のコンピューターが数台並び、照明器具や投影するための機材、マイク、スピーカー…様々な機械が設置されており、総硝子張りになっていた。出入り口は一ヶ所しかなく、其処だけは素材が違うのか黒色となっており異常なまでに目立っていた


中央のモニターへ近づき、各画面を見つめる

四分割されたモニターには番号が振られており、等しく暗闇だ

何かのスイッチに触れようとして、しかし、それは叶わなかった。手首を捕まれ顔を上げると、苛立ちを隠そうともせず、先程の青年が手首を掴んでいた


ぎり……っ


骨が軋む。舌打ち混じりにスイッチから離れる仕草を見せると、ようやく青年は手を離した


「アイン、下手に干渉するな」


アイン

そう呼ばれた青年は、肩を竦めると、肩にかかる髪を右手を使いふわりと背中に流す


「彼らを起こさなくちゃね。タイヨウに、負けてしまわないようにさ

君もそう思うだろう? ツヴァイ」


眼下を照らす強い光を指し、その光を放っている機材に目を向け、肩を竦めた

肌を赤くした娘達への配慮か、僅かに非難めいた空気を帯びている


ツヴァイ

そう呼ばれた青年は、態とらしく溜め息をつくと、中央にあるモニター付近のマイクに近づき


「起きろ」


静かにそう告げた

そして一人の娘 《999》が目覚めるまで、延々と同じ言葉を告げ続けた

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