第41話 ケンカ・チャンピオンのサクラ(7階層ボス戦)
俺達3人は、7階層のボス部屋に突入した。
ボス部屋は広い。
学校の校庭くらいの広さがある。
天井も高く、見上げると、ダンジョンバットが無数に飛んでいる。
部屋に入る前はボスの周りにいる8匹だけと思っていたが、どうやら外から見えなかった位置に、大量のダンジョンバットがいるらしい。
サクラは、【飛行】で8匹のダンジョンバットの中央に突っ込んだ。
手刀で2匹を叩き落とし、そのまま奥にいるボス、ジャイアントバットに向かって突っ込んで行く。
ジャイアントバットは、【飛行】するサクラを見て一瞬ひるんだように見えた。
その隙を、サクラは見逃さない。
空中で前方回転し、飛行した勢いを殺さず、あびせ蹴りで踵をジャイアントバットの胴体にブチあてた。
たまらず上空に、ジャイアントバットが逃げる。
「【スリープ】!」
サクラが睡眠魔法の【スリープ】を発動する。
ジャイアントバットの体が一瞬光った。
サクラの魔法をレジスト、無効化した様だ。
だが、護衛をしていたダンジョンバットと上空のダンジョンバットには有効だった。
残り6匹になっていた護衛のダンジョンバットの内、3匹が【スリープ】にかかり床に落下した。
上空のダンジョンバットからもかなりの数、おそらく10匹以上が床に向かって落下し出した。
俺とセレーネは、ボス部屋の入り口近く、後背を取られないポジションを取った。
「落ちたダンジョンバットを、始末してくる!」
俺は、スキル【神速】を発動した。
高速で移動して、落下したダンジョンバットにコルセアの剣を突き入れる。
ダンジョンバットは、防御力があまりないのだろう。
紙の様にあっさりと簡単に、コルセアの剣が突き刺さる。
床に落ちたダンジョンバットには、剣を突き入れ。
落ちる途中のダンジョンバットは、空中で切り裂いた。
俺は、次々とダンジョンバットを絶命させて行く。
俺の攻撃と同時に、セレーネが矢をつがえた。
放たれた矢は、正確に残った護衛役ダンジョンバットに命中した。
1匹、また1匹と、確実に護衛役のダンジョンバットを、撃ち落としていく。
セレーネは、冷静、と言うよりは、冷酷なハンターとなって獲物を屠る。
俺は、【スリープ】で落下したダンジョンバットの始末を終え【神速】で、セレーネの元に戻る。
俺は、セレーネの左前、弓の射撃の邪魔にならない所に、剣を構えて立つ。
「落ちたヤツの始末は、終わった。セレーネの護衛に入る!」
セレーネは、射撃を続けたまま返事をした。
「よろしく、こちらはラスト!」
言いざま、セレーネの放った矢は、護衛役のダンジョンバットの最後の1匹を貫いた。
俺は、背後のセレーネに告げる。
「立ち上がりは、上々だと思う」
「次のターゲットは?」
ボス部屋の低い位置に、敵はもういない。
上空でサクラとボスのジャイアントバットが空中戦を演じている。
ジャイアントバットは、サクラの初撃を食らった。
だが、その後は素早い動きで、サクラの攻撃を交わしている。
サクラは、体格差をモノともせずに、近接戦闘を仕掛けている。
サクラの【飛行】がうまい!
ジグザグに飛びフェイントをかけ、空中でジャイアントバットの懐に潜り込む。
しかし、ジャイアントバットは、うまくかわし、上空へ、上空へと逃げて行く。
ザコのダンジョンバットをサクラにけしかけて、サクラの動きを妨害している。
全体としては、サクラが押しているが、決め手に欠ける戦いになっている。
俺は、弓を構えるセレーネに指示した。
「ダンジョンバットを減らそう。ターゲットは、上空のダンジョンバットだ!」
「了解!」
セレーネは、ボス部屋の高い位置を飛んでいるダンジョンバットに、狙いを定めた。
一匹、また一匹と、ダンジョンバットが撃ち落とされていく。
無駄な矢が全くない。
俺は、セレーネの正確な射撃に、見惚れてしまった。
セレーネが、上空のダンジョンバット10匹を撃ち落とした所で、動きが出た。
上空にいるダンジョンバットの群れが、一斉に急降下を始めて、こちらに襲い掛かって来たのだ。
ダンジョンバットの数は、およそ20匹だ。
俺は、上空でボスを追い詰めるサクラに大声で指示を出した。
「サクラ! 【スリープ】!」
サクラは、戦いながらも俺の声に反応した。
睡眠魔法【スリープ】を発動する。
「【スリープ】!」
ボスは、またもサクラの【スリープ】をレジストした。
だが、こちらに襲い掛かるダンジョンバットの群れからは、数匹が眠りに落ちて、床に落下し出した。
それでも、まだ数十匹がこちらに降下してきている。
ダンジョンバットに向けて、セレーネが矢を連続で放つ。
俺は、セレーネとダンジョンバットの間に入り剣を構える。
その時、横から風切り音が聞こえた。
横を見ると、上空でサクラと戦っていたボスのジャイアントバットが、すぐそこにいた。
サクラが【スリープ】を発動した瞬間に出来た隙を突いて、俺とセレーネを先に片付けに来たのだ。
「なっ!」
俺は、驚愕の声を上げる。
同時に体が動いた。
セレーネを突き飛ばして、ジャイアントバットの降下線上から逃がした。
しかし、俺自身が、ジャイアントバットの降下線に入ってしまった。
俺は、ジャイアントバットの体当たりを、受けてしまった。
物凄い衝撃だ。
俺は、吹っ飛ばされ、床を何回転かした。
「ヒロト!」
「ヒロトさん!」
だが、ボルツ製のオーガの革鎧は頑丈だった。
ジャイアントバットの急降下体当たりから、俺の体を守った。
「大丈夫だ! ボスを狙え!」
ボスのジャイアントバットは、俺にトドメを刺そうと低空を飛行している。
俺に向かって一直線に飛んできている。
チャンスだ!
セレーネが連続して矢を放ち、ジャイアントバットの首、片目に命中をした。
俺は、矢の刺さった目の方、ジャイアントバットの死角になった方に【神速】で体を移動させる。
すれ違い様に、ジャイアントバットの片翼を斬り落とした。
ジャイアントバットは、バランスを崩し床に落下する。
そこに上空からサクラが、真っ直ぐに、拳を構えて、急降下して来た。
「らあああああ! 喰らえええええ! 破裏拳ボルト!」
サクラ!
いけない!
タツノコと車田先生に怒られるぞ!
俺の心配をよそに。
サクラの雄叫びと共に、重低音の衝撃が、ボス部屋に響き渡った。
サクラの拳が、ジャイアントバットの頭蓋を破壊し、ジャイアントバットは、息絶えた。
サクラが、ムクリと立ち上がり拳を突き上げる。
「わたしが、ケンカチャンピオンだー!」
サクラは、興奮してアドレナリンが出まくっている。
「サクラ! セレーネのカバー!」
セレーネが、生き残ったダンジョンバットに襲われている。
セレーネは、腰に差していた片手斧を右手に持って、ダンジョンバットの脳天をカチ割っていた。
残りは10匹程度。
俺は【神速】移動して低空を飛ぶダンジョンバットを斬り落とし、サクラが【飛行】して手が届かない高さののダンジョンバットを、殴り落とした。
セレーネの側に、ダンジョンバットがいなくなると、セレーネは弓矢に持ち替えて射撃を再開した。
上空高く逃げていた最後の一匹が、セレーネの矢で撃ち落とされた。
こうして7階層のボス戦は、俺達の勝利で終了した。
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