【1回裏】3球目

前回の不二家のエピソードからあまりにも時間が過ぎてしまったので、読者の皆様も前回のお話を忘れているかもしれない。前回は選挙期間中の前半について話をした。主に私が寂しかったという内容である。


その後、私自身の記憶としては、姉2人は知らぬうちに東京に戻っており、家に人の出入りは減り、事務所の人も少なくなっていた。父はその年票は例年通り入っていたが、他の候補者がその票数を上回ったために落選したのである。ここで十数年関わってた政から手を引くこととなる。


私が落選した瞬間の記憶は定かではないので、すでに寝ていたのか、起きていたのかすらわからない。ただ、日に日に人の数が減り、事務所の片付けを手伝ってくれる方は本当に親しい人のみになった。「政治家は辞めればただの人。」この言葉は本当にその通りで、落選してしまえば普通の生活に過ぎない。


私自身は当選したか落選したかも知らずに呑気にワープロのおもちゃで遊んでいた。当時は究極のパパっ子だった為に、父が職場に行くというのを無視してワープロで満足するまで遊んでおり、ワープロに満足した私は父の職場に行くと言って聞かず、母に車を出させて父の職場に向かった。到着した後、私は父の職場の入口で母に降ろしてもらい、そのまま入口に向かった。今思えば当然なのだが、入口に着いたところで鍵がかかっており、入れるわけもない。さらに休日なのでなおさらだ。母はすでに自宅に向かって帰っていたし、私は入る術もなく試行錯誤しながら入口で呆けていた。長い時間入口で待っていたのか、なんとかして入ることができたのか全く記憶にないが、父と合流できた時父は呑気に「ずっと待ってたんか?」と言っていた。

私を降ろして帰る母も母だが、父も父である。(私が誘拐でもされたらどうするつもりだ。)


その後、保育園を卒園し小学生に上がった私は、自分が政治家の娘であることが死ぬほど嫌になった。同じ町内に住む威勢のいい同級生が廊下で私の横をすれ違うたび、父の遊説の真似事をするわけである。小学1年でもなかなかませており、一定のプライドを持っていた私としては死ぬほど恥ずかしく、自分の父親が政治家だった事実は自身の口からは高校生になるまでほとんど人に話したことはない。


ただ、かくいう私もなかなかのおてんば娘で、小学1年生の時、休み時間の遊び場は校長室といった具合で、お騒がせをしていたのである・・・。

(若気のいたりだ。)


次は小学生になった私の生活と不二家についてお話しようではないか。

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