ティアーズ・オブ・モンスター

穂積蓮

壊れた心

第1話 時が止まるはずだった。

微笑ながら出した結論。・・・お前が悪い。

歪んでしまった愛が、死の選択を容易にさせたあの日。


ヨレヨレになった紙袋に詰め込んだ、黒、青、赤。色とりどりの錠剤。

致死量の3倍を超える紙袋に詰まった毒物をのぞき込み、笑みがこぼれる。


『へぇ~、まるでマーブルチョコだな。』


旅たちの祝い酒を一気に飲み干し、肴代わりに毒物をほうばる。

味・・しない。最後の晩餐なのに、質素すぎると考え冷蔵庫をあさる。

何もない。あぁ、思い出した・・・。最後のコインは毒物に代えたんだった。

食い物ない。彼女は、もういない。何かが欠けてガランと広がった空間は、もう満たされる事はない。だから最後のコインはコイツに代えたんだった。


早く!もっと早く!


誰かが頭の中ではやし立て、紙袋を逆さまにして一気に飲み干す。


『はは!これでもう帰らない。・・・時間は止まる!』


激しい嘔吐と共に予想を遥かに超える地獄が始まった。肺は空気を吸い込む事をさぼりはじめ、血管は熱湯を運び始める。苦しい。苦しい。く・る・し・い。

味わった事の無い苦痛の果て、命を刻む時が止まるはずだった。そう期待していた。


だが、絶望の果て手に入れた、歪んだ勇気を称賛する神はいなかったらしい。


数は3まで数える事が出来る。半日前なら覚えている。覚えているつもりだ・・・。

死にきれず生き伸びた代償として与えられた罰なのだろうか、俺は廃人になった。

それでも生きている。これが罰では無いと言えるなら・・・教えて欲しい。

罰とは何か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る