第89話 おうとへゴーでしゅ 4

 牧場まではこの馬車で一時間ほどだというので、牧場では何があるのか質問する。


「ろんなおにくがありましゅか?」

「これから行く牧場には、ほとんどあるぞ。牛、鶏、豚はもちろん、馬と羊、ウサギやカエルもある」

「は?」


 ウサギはまあ、わかる。日本で飼育しているところがあると聞いたことがあるから。だが、カエル、だ、と……!? さすが異世界、地球では一部の地域でしか食べない食材を、畜産しているとは!

 ……買わないけどな!


「で、なにが欲しい?」

「うしとー、とりとー、ぶたとー、うまとー、ひつじー。うしゃぎはまものでいいでしゅ」

「あー、うん、そうだな。ステラが言った動物はどれも魔物化しているものだし、実際に魔物化した肉のほうがうまいんだよ」

「ほえ~」

「とはいえ、種の保存として畜産しているからな、この国は。その関係で、下手な魔物肉よりも美味いぞ」

「おお~! しょれはきたいできましゅね! とりのたまごもかえましゅか?」

「買えるぞ。買って五日以内なら、生でも食えるくらい新鮮なのがな」

「にゃま!? TKGにしぇねば!」

『ティーケージー?』


 あ、揃ってTKGに反応した(笑)

 ここはTKGの美味さを宣伝せねば!

 ということで、ほっかほかの炊き立てご飯の上に、生の卵をかけて食べることを卵かけご飯だと説明。この世界のものも生で食べることができるとはいえ、主にそのまま飲み込むことが主流のようで。……日本にいた時、父がそのまま飲み込んでいたなあと思い出した。

 卵を買ったあと、翌日の朝食で実食してみるか聞くと、全員が揃って頷いた。特にアルバートさんは聞いたことがない料理とのことで、興味津々らしい。

 ……料理と呼べるほど崇高なものではないが、トッピングによっては立派な料理昇格するしなあ、TKGって。それこそ千差万別ってやつになるしね。

 そこは置いといて、まずは材料の卵を入手しないことにはTKGどころか他の料理すらもできない。それに、できれば大量に購入したい。個人で買えるのはどこまでなのかアルバートさんに聞くと、個人だと箱単位の購入で三箱までだそうな。


「しゃんはこ……。できればごはこほしいでしゅ」

「なら、我らで一人二箱ずつ買えばいいでしょう? そうすればいろいろな料理に使えるでしょうし」

「そうね。お菓子も作れるんでしょう?」


 セバスさんが提案し、セレスさんが頷いてくれる。しかも、お菓子のリクエストまで。


「あい、もちろんでしゅ」

「なら、ステラだけ三箱にして、他は二箱にすりゃあいい。ティーケージーとやらも気になるが、お菓子も気になるしな」

「あ、あい。やきがしも、ちゅめたいのも、ちゅくれましゅ」

「ほほぅ……。それは、是非とも、お願いしたいねぇ」

「わ、わかりました!」


 冷たいお菓子に反応したアルバートさんだが、料理人なだけあり、教えろ~! という圧が凄い、凄すぎる。なので私もしっかり頷いた。つうか、アルバートさんが知らない料理ってあるのか? そっちのほうが知りたいわ。

 そんな話をしているうちに、牧場に着く。周囲は雪に覆われているけれど、その寒さに負けることなく、牛や馬、羊に加えて鶏もいるし、ウサギもいる。カエルは室内で飼育されているそうなので、外にはいなかった。

 つうか、外に出てる動物たち、みんな元気だな。そしてやっぱり地球の動物たちよりもデカい。

 そんな様子を眺めつつ、買い物ができる場所に着くと、テトさんの抱っこで店舗まで移動。アルバートさんが卵の確認をしてくれるというので、先に行っている。なければ別の牧場か王都まではおあずけになってしまうのだ。

 すぐに手招きをしてくれたので、在庫はありそうだ。やったね!

 テトさんに抱きかかえられたまま、店内に入る。壁際には暖炉と、薪ストーブらしきものが点在しているからなのか、店内は温かい。しかも、購買コーナーは最低限のものしか置いておらず、それを見て注文するスタイルのようだ。

 温かい場所に放置していたら、肉も卵も痛んでしまうからみたい。だって、レジカウンターのうしろにある扉から、卵の箱が大量に運ばれてきてるんだもの!


「他に欲しいのは?」

「んと、うしゃぎとかえりゅいがいの、ここにあるしゅるいのおにくを、じぇんぶぼしいれしゅ!

「くっ、どれくらい?」

「こじんでかえる、げんかいまで!」

「ぶふっ! ほ、他には?」

「ミルクとー、ちーじゅとー、もしあればにゃまクリームとー、バターとー、よーぐりゅとも!」

「噛みまくってんな、おい」


 カミカミな私の言葉に、アルバートさんを筆頭に店内にいた従業員たちが微笑ましいとばかりに私を見つめる。しかも、アルバートさんはまさに草が生える状態での言い方だ。


 幼児だからね! カミカミですまんね!


 とりあえず、牛からはミルクとバター、生クリームとヨーグルトを、一人で買える限界の十キロほどを購入。ヤギはミルクのみ。

 あとはチーズなんだけど、これまた種類が豊富だ。牛だけではなくヤギと羊のチーズまであるのだ!

 こちらの個人での購入限界は一キロまでなので、それも全部購入。乳酒にゅうしゅという馬とヤギから作ったお酒もあると聞いたが、それは大人たちが飲むことに。

 私も飲んでみたいけどさー、まだ幼児なわけですよ。しかも、この世界の乳酒にゅうしゅのアルコール度は、話を聞く限り地球のものよりも度数が高そうだ。

 なので却下されました。この世界で成人したら飲んでみたいなあ。……十数年先だけどな!

 とりあえず、自分が欲しいと思ったお肉類と乳製品、ゲットだぜ!


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