第88話 おうとへゴーでしゅ 3
「どこにあるでしゅか!? しゅぐにかえましゅか!? どんなあじでしゅか!?」
「いいから落ち着け、ステラ!」
「いひゃいれひゅー!」
矢継ぎ早に質問したら、アルバートさんに落ち着けと頬っぺたを軽く引っ張られた。ガッデム! 痛いがな!
あぷあぷしてたら通過する町にあるというので、寄ってもらうことに。
「味も素っ気もないんだが、それはいいのか?」
「ひんしゅによるでしゅよ。わたちがちってるのは、ほのかなあまみをかんじるんでしゅよ」
「へえ……。食ってみてえな」
「いいれしゅよ。あとでたくでしゅ」
「……たく?」
どんな調理法かわからなかったらしく、首を傾げるアルバートさん。昼か晩ご飯に実践するというと、ニッコリ笑って頷いた。
それはいいんだが、まずはどんな米なのかわからないと炊き方がうまくいかない。なのでそれを伝えるとちょうど一時間ほど走った先にそこそこ大きな町で、米を作っているところを通過するそうなので、その町に寄ることに。
他にも欲しいものがないか聞かれたから、主にこの国で買える食材が欲しいというと、品数が揃っているのは王都が一番だそうなので、そこまでお預けに。
どんな食材があるのか、装飾品のデザインはどうするかなどの話をしているとあっという間に町に着いたので、中へと入る。
王都へと至る道だからなのか、そこそこの賑わいがある。まあ、初冬なのでまだ人は多いが、もっと寒くなるともっと人が減るという。
……え? これで初冬!?
どういうことだと話を聞くと、今はまだ十月の半ばで、これからもっと寒くなり、雪も深くなるという。特に今いる国とひとつ前に国は北の極限に位置する国で、この世界で一番初めに雪が降る地域。
なので、積雪一メートルや二メートルなんざ、まだまだ可愛いモンらしい。
……それは恐ろしい。どんだけ降って積もるんだよ。
そんなこの世界の北国事情は置いといて。話しているうちに店に着いたので、店内へと入る。
「ここは主に穀物を扱っている店なんだ」
「ほえ~」
アルバートさんが教えてくれた通り、店内にはたくさんの穀物が並んでいる。麦や豆はもちろんのこと、この世界独特のものなのか、直径一センチほどの円形で平べったいものが棚の中にあった。
あれだよ。見た目は箱や袋に入ったシリアル。ただし、こちらはその形状のまま実にぎっしりと詰まっているらしく、見本となる実が置かれていた。
大きさとしては直系一・五センチ、長さ五センチほどの楕円形。豆やとうもろこしのように片面にくっつき、十から十五枚ほどがずら~っと並んでいる、マメ科の植物というか穀物だそうだ。
売っているものは乾燥させているそうで、そのまま食べるもよし、スープに入れたり牛乳に入れたりして食べるもよしだそうな。って、食べ方はまんま地球のシリアルじゃん(笑)
味見として一枚食べさせてくれたんだけど、食感はまんまシリアルで、味はちょっと甘みのある大豆。なかなか美味しいけど、確かに甘さが足りない。
とはいえ、元日本人で海外出張してた私だ。乾燥した果物を小さく切ってヨーグルトに入れたり、牛乳や豆乳と一緒に食べたことがある人間だ。
ヨーグルトがあるかどうかはわからんが、牛乳で食べるのはアリだと思う。
てなわけで、一番大きな麻袋で二袋ぶん、買ってもらった。つうか、お金を出そうとしたらテトさんが買ってくれた。おっと、今は兄だった(笑)
「テトにいしゃま、ありあとー」
「どういたしまして。他には必要なものはあるかい?」
「んと、おこめがほしいでしゅ」
「ああ、そういえば……」
本来の目的である米のことを伝えると、すぐに店員に話をして米のあるコーナーに案内してもらう。すると、そこには数種類の米が。どれも脱穀はしているけれど、精米まではしていない状態だ。
見た目はインディカ米の長粒種が二種類、同じ細さでその半分くらいの短粒種も二種類、あとは日本でよく見たジャポニカ米と同じ形だ。しかも、もち米に似たものもあるようで、突くと粘りが出て延びるという説明がついている米もある。
これは期待できそう!
そして短粒種だけど、同じ短粒種であるジャポニカ米よりも細く、もち米よりも小さい。説明を見ても、これはニワトリの餌になるもののようだ。
あとは、
なんて思いつつ欲しいと思ったものを指差し、試しだからと麻袋の一番小さいもので一袋ずつ購入。ジャポニカ米ともち米っぽいものだけは、一番おおきな麻袋で購入してもらった。
店のおっちゃんはそんなに買って大丈夫かと、不安そうというか不思議そうな顔をして首を捻っていたが。
他は特にないので、もしあれば乾燥果物を売っている店に寄ってほしいというと、すぐに移動。そこで今の時期に並んでいる旬の果物と、乾燥果物を買ってもらい、町をあとにする。
肉や乳製品に関しては出発した町である程度購入したけれど、途中に牧場があるというので寄ってもらうことに。
だって、実物を見てみたいじゃない?
てなわけで、牧場に向かってしゅっぱーっつ!
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