第83話 こんごのよていでしゅ 1

 さて、アルバートさんがいない間に、今後どう行動するのか聞かねば! なんて考えていると、キャシーさんとスーお兄様が来た。ここから話し合いでもするのかと思いきや、なんと彼らはまたその姿を変えたのだ!

 バトラーさんとテトさんは、死の森で見せてくれたような、十代後半から二十代前半のような若者の姿になった。見た目は私と兄妹に見える。

 キャシーさんはそのままスキンヘッドでムキムキマッチョな護衛、スーお兄様も細マッチョなイケメン青年に変化。二人の顔が似ていることから、兄弟の護衛となるようだ。

 そしてセバスさんはいかにも「大商人です!」といった風貌な中年のおじさまに、セレスさんもどこかおっとりしているものの「大商人の妻です!」といった雰囲気の女性に変貌していた。

 見た目でいえば、セバスさんはロバート・デ・ニーロ、セレスさんはキャメロン・ディアスに似ている。どのみちイケメンで美女ですね!

 しかも、バトラーさんとテトさんの親と言われても問題ないくらい、顔がそっくりになっているんだが!


 その変身能力の高さがこえーよ、大人しんじゅうたち!


 内心で戦々恐々としているとセレスさん以外の全員が席に着く。私? バトラーさんとテトさんの間に座らされているとも。席に着いたあとしばらくすると、紅茶の香りとともにセレスさんが現れ、全員に配る。すかさずセバスさんがクッキーを出した。


「さて、今後の予定なんだが。まず、スタンピードの魔物は場所を借りて解体したあと、皮をなめしたりする」

「魔石はどうするのかしら」

「小さいものは加工して魔道具用に、大きいものは売るものと魔道具用にしたい。加工はスティーブたちに任せていいかね?」

「ええ。お任せあれ」


 セバスさんがまたもや口調を変え、キャシーさんと話をする。

 なるほど、魔石の加工はキャシーさんたち蜘蛛コンビがやるのか。

 宝石に関しても同じで、こちらは小さいものを髪飾りなどの装飾品にするそう。ただ、デザインは単調になりがちなので、そこは私にもアイデアを出してほしいとお願いされたので頷く。

 だってさあ、カットしてる宝石なんて、ほとんどないんだぜ? 原石を割ったり砕いたりしてカットされた平面部分を上にし、周囲を細い革紐で編み込んだり、溶かした金属にそのまま埋め込んだりしているようなものしかないんだぜ?

 カットされていても、地球でいうところのラウンドカット、しかもシングルカットよりもさらに面が少ないというね……。


 バステト様ーー! その技術くらい教えておきなよーーー!


 とは思うものの、宝石のカットは面が増えるほどに難しくなるし、中にはエメラルドのように割れやすいものもある。カットするにしてもとても技術が必要になってくるのだ。

 宝石をカットするにしても、その宝石よりも硬いものじゃないと削れないしね。

 地球だとダイヤを使ってカットしているそうだけれど、ここは異世界。ダイヤよりも硬い金属があるはず。

 なので、デザイン云々よりも先に、ダイヤよりも硬い金属があるか聞いてみた。


「ダイヤモンドよりも硬い金属、ですか。アダマンタイトやオリハルコン、ダマスカスあたりでしょうか」

「にゃるほろー」


 執事に時に近い柔らかい口調でセバスさんが教えてくれた金属は、ファンタジーあるあるな鉱石たちだ。アダマンタイトはダイヤモンドが語源とされているから除外して、どっちがより硬いかとなるとダマスカス一択になるらしい。


「しょれって、ふつうにかえましゅか?」

「量にもよりますね。どれくらい必要でしょう」

「わたちのこゆびのしゃきくりゃいでいいれす」

「「「「「は!?」」」」」


 そりゃあ驚くよね! まさかそんなに少ないとは思わないものね!

 だから、つたないながらも宝石をカットするのに必要な量なのと、ダイヤがカットできればいいと話すと、すんごく驚かれた。えー……マジか……カットで驚かれるんか……。

 と、とりあえず、カットの話はまたあとでと言い、続きを促した。


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